2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

2017年11月20日 (月)

西澤健一(作曲、脚本) 歌劇『卍』 (原作:谷崎潤一郎) 世界初演 11/17

【作品と背景】

作曲家・西澤健一の作品をはじめて耳にしたのは、2012年の個展においてであった。西澤氏がどのような立場にある作曲家なのか、私はそれほど詳しいわけではないが、自らの才覚だけを頼りに、インディペンデントな活動をしているように見えるのは間違いではあるまい。前衛主義というのとはちがう。もともと私に彼のことを紹介した人によれば、もとは斬新な手法に基づく作風であったのが、勇気をもって転身し、聴く人とのコミュニケーションを重くみる作風に変えていったということだ。

» 続きを読む

2017年11月17日 (金)

ヴァレンティン・シルヴェストロフ 80歳記念ガラ・コンサート アレクセイ・リュビモフ pf ほか 11/9

【3時間で一挙に詰まった距離】

ロシアの作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフは、歴史のなかに埋もれた天才なのであろうか。そもそも、ここ100年ほどのクラシック音楽は、その歴史に触れるにも手ごろな資料が少ないのだが、わけてもシルヴェストロフは、そこからさらにはみ出るような場所で、美しい花を咲かせてきた。日本ではほとんど知られておらず、今回が初来日となった。そして、衝撃が走ったのである。いきなり80歳を祝う特別な機会で演奏された彼の作品には幅があり、同時に統一感にも満ちて、ずっしりと重かった。ホールのプロデューサーによれば2時間を予定していたというコンサートが、3時間に膨らんだのはなぜだろう。ともかくオペラよりも長い、この貴重な時間が私たちの距離をみるみるうちに縮めていったのだ。

» 続きを読む

2017年11月13日 (月)

日生劇場 ドヴォルザーク 歌劇『ルサルカ』 演出:宮城聰 田崎組(一般公演/初日) 11/9

【芸術の使徒】

日生劇場のオペラ公演は、教育面や、契約者へのサービスという側面ももつ都合上、ユニヴァーサルな演出が求められる。それにもかかわらず、モーツァルトのほか、ヤナーチェク、アリベルト・ライマン、そして、今回の『ルサルカ』など、なかなか日本の舞台にかからない作品を手ごろな箱のなかで見せてくれる貴重なシリーズでもある。より開かれた対象に、本物の舞台を観てもらうという正攻法である。券売所で並んでいると、案内の女性が「オペラ」を「ミュージカル」と呼んでしまう微笑ましい劇場は、生音の音響としてはややデッドな弱点があり、グランド・オペラの上演にはオーケストラのためのスペースが足りないという問題があるが、ライマンのオペラを上演した際、オーケストラを一部、舞台にあげてしまう工夫が当たった。それぞれの公演の演出チームは変わっているものの、実践の蓄積のなかで得た知見は、年を経ても劇場のなかで確実に踏襲されているようだ。今回はさらに、合唱や管弦楽のバンダをときどき、客席を取り巻くように配置した山田和樹らしい趣向で、一歩前進というところである。劇場としては狭い空間を、効果的に拡張するアイディアであった。

» 続きを読む

2017年11月 2日 (木)

エリシュカ フェアウェル・ツアー vol.2 リムスキー・コルサコフ 交響組曲『シェヘラザード』 ほか 札響 604th定期 10/27、28

【概要】

皆が、彼の健康を気遣う気持ちがなかったら、もっと長い拍手がつづいたかもしれない。一秒でも長く一緒の空間にいたいオーディエンスの気持ちと、老体にあまり負担をかけてもいけないという心遣いが鬩ぎ合うなかで、最後にエリシュカが元気な姿を見せくれた。舞台袖から、楽員たちもそれを見守っている。フェアウェル公演は、最高の雰囲気のなかで幕を閉じた。ラドミル・エリシュカと札響による幸福な10年はおわるが、この間に楽団は大きな変貌を遂げた。過去に所属した主要な団員が、N響コンマス、読響首席奏者、その他のオーケストラの首席クラスに就任しているように、リソースは初めから充実していたのだが、エリシュカとともに札響の名前が世に轟くと、そのリソースが一挙に花開いた。パスティエルとアルトゥスという2つのレーベルから出された10年以上に及ぶ録音のアーカイヴはそのまま、2002年に経営危機が報じられた札響が復活し、花開くまでの歴史を記録したことにもなろう。

» 続きを読む

2017年10月24日 (火)

エリシュカ フェアウェル・ツアー vol.1 ドヴォルザーク テ・デウム/交響曲第6番 ほか 大フィル 512nd 定期(初日) 10/19

【思いのほか、元気】

指揮者ラドミル・エリシュカと札響の組み合わせは多く聴いてきたが、大フィルとの組み合わせは初めてだった。そして、これが最後になるはずだ。医師から長旅を禁じられたというエリシュカの最後の日本ツアーが、大阪で幕を開ける。エリシュカとともに名声を高めたのは、なんといっても札響なのであるが、大フィルも1枚のディスクを発売し、それに次ぐ成果を挙げた。特筆すべきは、彼らがヤナーチェクの『グラゴール・ミサ』、ドヴォルザークの『スターバト・マーテル』、それに、この日は同じくドヴォルザークの『テ・デウム』を演奏して、大規模な合唱付きの宗教作品を取り上げ、札響でいくらか欠けているレパートリーの一環を穴埋めしたことだ。なお、札響では同じ『スターバト・マーテル』と、ベートーベンの『第九』が取り上げられた。北・西2つのオーケストラが車の両輪となって、エリシュカの日本での活動をサポートしたとみるのも間違いではあるまい。

» 続きを読む

2017年10月16日 (月)

パーヴォ・ヤルヴィ バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 ほか N響 Cプロ 9/28

【息をするように新しさを醸し出す】

パーヴォ・ヤルヴィとN響のスクリャービンが素晴らしかったこともあり、券を買い足して、バルトークのコンサートにも足を運んだ。これはBプロのため、すべて会員で埋まるというシリーズだが、個人売買によって席を確保。チケットの高額転売に強く反対する私としては、定価以上にはならないオケピを用いた。2階席でさらにディスカウントする相手もいたが、この演目では1階席の、通路より前方を確保したい。それに相応しいものがあり、気持ちよく取引が成立した。実際、はじめてのサントリー定期を聴いてみると、N響がまるで海外のオーケストラのように響く。多分、リキを込めて演奏しないと響きが届かない渋谷のホールと比べると、肩の力を抜いて、8割ぐらいで弾けることで、本拠地とは異なるまろやかなサウンドを出すことができるのだ。

» 続きを読む

2017年10月13日 (金)

アンサンブル・ノマド ヴァスクス 『遠き光』 ほか 設立20周年記念 「饗宴」vol.1 9/23

【饗宴シリーズ】

現代音楽は、ひとつには優れた演奏家によって支えられているともいえる。ドイツ、オーストリア、フランス、アメリカなどには、必ず現代音楽を魅力的に演奏できる力強い発信者がいるものだ。アンサンブル・モデルンクラングフォーラム・ウィーンアンサンブル・アンテルコンタンポランICEなどのアンサンブルや、アルディッティQクロノスQのような人たちだ。また、かつてのロストロポーヴィチのように、優れた演奏家が個人で見所のある作品を広めていく例もある。この日の演目のひとつ、ペトリス・ヴァスクスの『遠き光』も、世界的なヴァイオリニストであるギドン・クレーメルの力添えなしには大きな成功を掴めなかったかもしれない。

» 続きを読む

2017年10月 7日 (土)

スクリャービン 交響曲第2番 ほか パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) N響/Cプログラム 9/22

【ヒエラルキーを打破する音楽】

パーヴォ・ヤルヴィの時代になって、N響がかなり良くなっている印象は実感していたものの、その本丸であるヤルヴィのコンサートには足を運んだことがなかった。従来、私はヤルヴィの手腕には疑問符をつけていて、得意な分野はあるものの、レパートリーによっては完成度にムラがあるという風に感じていた。ドイツ・カンマーフィル・ブレーメンとの相性はよく、私は横浜で彼の『フィデリオ』を聴いて、ある程度の満足を得たが、それでもファンになるほどではなかった。ヤルヴィはドイツ・カンマーフィルのほか、これまでにシンシナティ響、パリ管などのポストに就いて、実績を挙げており、とりわけ、ビシッとアンサンブルを整えるプロとしては筋金入りの実力との噂もある。しかし、N響でのプロジェクトは、彼にとってはこれまでにないものになる可能性がありそうだ。

» 続きを読む

2017年9月26日 (火)

第7回チェコ音楽祭「ヤナーチェク・ナイト」 歌劇『イェヌーファ』(抜粋) ほか 9/7

【顕微鏡で覗いたような緻密さ】

第7回を数える「チェコ音楽祭」だが、今年はオール・ヤナーチェク・プログラムで、歌劇『イェヌーファ』の抜粋公演がメインという意欲的なものだった。歌劇はピアノ伴奏に、一部にヴァイオリンが参加。キャストはイェヌーファのほかに、コステルニチカとラツァだけに絞られたが、予想以上に素晴らしいパフォーマンスとなっていた。前半の室内楽プログラムも含めて、どの演目も顕微鏡で覗いたような緻密さを示している。よく考えられ、限られたリソースでも、それをどのように使うと、作品の魅力がもっともよく伝わるのか、考えた人のアイディアが素晴らしいというほかないのだ。

» 続きを読む

2017年9月20日 (水)

ラモー 歌劇『レ・パラダン』 ジョイ・バレエ・ストゥーディオ 再演 9/1

【正統派の舞台づくり】

ジョイ・バレエ・ストゥーディオは、2012年の『プラテー』を皮切りに、再演を入れながら、『レ・パラダン』『優雅なインドの国々』とラモー作曲の3つの作品を、フル・スペックでレパートリー化した素晴らしいカンパニーである。私は初回の『プラテー』をみて、このブログのなかで好意的な評価を示した記憶がある。その後、このカンパニーの公演に関心は強かったが、なかなかタイミングが合わずに、これが2度目の視聴となった。『レ・パラダン』は2013年プレミエからの再演であるが、この日の指揮も担当したパリ市立音楽院(CRR de Paris)教授であるステファン・フュジェと、過去の公演でプラテー役を歌った著名なテノール歌手、エミリアーノ・ゴンザレス・トーロのサポートを受けて研究を進め、未だ公刊された現代譜のない作品から、いくつかのピースを現代譜に起こして世界初演する栄誉にも恵まれた。

» 続きを読む

«柴口勲監督 映画『隣人のゆくえ~あの夏の歌声』 @K's cinema (新宿)

ツイッター

  • ツイッター

最近のコメント