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2009年8月25日 (火)

小川典子 夏の音楽浴Ⅱ ドビュッシーの日 8/24 ①

東京文化会館の主催による「夏の音楽浴Ⅱ ドビュッシーの日」を聴いてきました。このコンサートは、1人のピアニスト(小川典子)が、1回1時間弱のミニ・リサイタルを13時/16時/19時からの3回、ぞれぞれ内容をかえて行なうものであり、テーマはドビュッシー。初期、中期の代表作と、晩年の大作「12の練習曲」が取り上げられ、全部の演奏会を聴くと、1日にして、ドビュッシーの音楽的遍歴のエッセンスを理解できるという試みであった。

各演奏会は、演奏者自身の司会で進められ、これから弾く楽曲の背景が話されるなど、ちょっとしたレクチャー・コンサートのような様相も呈していた。

なお、1回ごとの料金は2000円、3回通し券で5000円というリーズナブルなコンサート。1回のコンサートが終わると、90分ほどの空きがあり、特異日なので周りの美術館などはお休みだが、すこし遅い食事を摂ったり、〈沈める寺〉や〈荒れた寺にかかる月〉を聴いたこともあって、なんとなく浅草寺詣で(ただし、本堂が改修中だった)をしたりして楽しんだのであった。

【13:00 音楽の軌跡・・・象徴派として】

最初のコンサートは、ベルがマスク組曲、前奏曲集Ⅰ・Ⅱ、子どもの領分などからの演奏で、どれも初期作品から円熟に向かっていくときの作品である。また、一般的に演奏されることが多いのも、このグループのなかの作品が多いということになる。あまり深くは立ち入らなかったが、小川典子は、ドビュッシーをよく言われる「印象派」ではなく、「象徴派」として捉えているようだ。そして、前奏曲集ⅠとⅡの間に飛躍があり、後者からは1つ1つの音の響きをじっくり味わわせるような作風になっていると指摘する。

なるほど、そう言われてみると、前奏曲集Ⅰまでの作品は、素朴な飾らない美がのんびりと染み出しているのに対して、前奏曲集Ⅱ、子どもの領分、喜びの島などといった作品では、より自由で、飛躍的なイマジネーションが浮かび上がっているようにも思われる。

前者の代表としては、有名な〈月の光〉が挙げられるだろう。小川の演奏は、ただ美しいというよりは、優しく、艶やかで、かつ、ほんのりと物悲しい。ちょうど紀貫之のような感じである。前半部分の清澄な美しさは、作曲者であるドビュッシーと、演奏者である小川のこころの美しさを二重写しにする。しかし、古い旋法を導入した中間部分を丁寧に弾いたあと、同じテーマが戻る部分では、むしろ物悲しさが先行している。こうした詩的な実現のなかにあって、ナチュラルに忍び込んでいる構造への意識にも注目したい。つまり、このはんなりした佳曲のなかでも、ドビュッシーは従来の常識的な語法に優しく語りかけて、和声と響きへの新しい試みをなることも忘れていない。

しかし、そのやり方がまた大人しいもので、音楽的にはエリートであるが、家門的には卑俗、知的にもエリートとはいえないドビュッシーの奥ゆかしい問いかけになっている。私はそうしたドビュッシー像にかなりの共感を覚えるとともに、小川の優しい打鍵にも涙腺を緩められた。

一方、前奏曲集Ⅱ以降の新しい世界では、『喜びの島』が印象的だ。愛の神、ヴィーナスが待つ『シテール島への巡礼』という絵画にインスピレーションを受けた作品は、「たのしみの島」とでも言ったほうが相応しく、ウキウキするような感じであると小川は述べていた。そして、その言葉に添った打鍵の跳躍感、紛れなく明瞭な和声の明るい輪郭は、この曲の演奏にとって理想的なものだったといえる。

このように、この日の小川の演奏は全体を通して、レクチャーで話した特徴をいくぶん強調したような演奏で、わかりやすかった。しかし、「強調」といっても、受け手の感性を甘くみて、楽曲のフォルムを恣意的に浮き上がらせるようなものではなく、聴き手を十分に信頼した、つまり、隠し味がほんのり効いたような演奏であったことを断っておかねばならない。

(②につづく)

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