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2009年9月22日 (火)

ボッセ シューベルト & モーツァルト ブルーメン・フィル 32nd定期 9/22

ブルーメン・フィルはかつて1回だけ聴いたことがあったが、アマチュアながら質のいいオーケストラであると記憶していた。前回は、団の創設に縁のある寺岡清高の指揮で聴いたはずだが、今回、ゲルハルト・ボッセが客演するというのにも興味があったし、昨年、スダーン&東響がその真価を教えてくれたシューベルトの交響曲がメインに組まれているとあって、足を運んでみることにした。なお、ボッセとの組み合わせは、これが3回目になるそうである。

【メンデルスゾーン】

最初のメンデルスゾーンを聴いて、やっぱり前回の印象は間違ったものではなかったと確信した。序曲『静かな海と楽しい航海(海の静けさと楽しい航海)』は演奏頻度が多い曲ではないが、交響曲などにも表れるメンデルスゾーンらしい特徴が凝縮した佳曲である。〈静かな海〉の場面は、すこしだらりとした感じの傾いた演奏になっており、これは多分、意識的に狙ったところではない。あまり厳しい指弾になってもいけないが、この楽団のひとつの弱点は、こうしたシーンにおいて、必要以上に響きがナイーヴになってしまったり、あとで指摘するように、子どもじみた響きになってしまう点にあると思った。

今回、それが変なところで効いて、奇しくも魅力的な演奏になってはいたが、老齢になった指揮者がよく陥るような、太陽が黒くなってだらりと落ちていくような不健康な(それだけに、また魅力的な)響きがして、老いてなお壮健なボッセらしくないのである。その雰囲気は〈楽しい航海〉の部分で覆され、私はほっと胸を撫で下ろしたが(つまり、ボッセが衰えてしまったのではないことを確認できたから)、正に輝かしい後半の響きは逆に胸のすくようなものであり、全体としては素晴らしい演奏になっていた。

【指の先まで神経が行き届いたモーツァルト】

2曲目は、モーツァルトの『交響曲第40番』である。ブルーノ・ワルターの時代のような快速なテンポ、刈り込まれた響きによるスリムな演奏であった。ボッセはいつもそうだが、繰りかえしはしっかり全部演奏し、テンポが速くても、演奏は1つ1つのパーツを実に細やかに練り上げたあとが窺われる。こうした演奏には考える時間があって、考える材料も繰りかえしの度に増えていくのでありがたい限りなのだ。しかも、リズムの配置に若干の変化をつけて、少しずつ聴き手を刺激することも忘れない。コンサヴァティヴな手法ではあるが、それだけに効果的である。

全体としてみると、アンダンテが印象に残るように工夫されている。しかし、そのことから直ちに連想できることとはちがい、モーツァルトの交響曲で2つだけの「短調」としての特徴は、さほど強調されていない。とはいえ、清楚で柔らかなメロディーは繰りかえしを通って、少しずつ味が濃くなっていき、この交響曲のもつバックボーンを控えめに語ることは確かだ。このシンプルなドラマトゥルギーの進行は、メヌエットでも同じように効果的である。ただし、ボッセの場合、このメヌエットはトリオの明るさが本体である。

アレグロ・アッサイは、第1楽章のアレグロ・モルトよりも落ち着いた感じである。やりようによっては悲劇的に、嗚咽するような感じにもできるが、ボッセの演奏は、素直に楽曲の構造的な成熟を語るだけである。薄くためを使いつつ、人が語りかけるような開始から、誇張的な悲劇性の導入は一切肯じない。繰りかえしを忠実に演奏し、それに見合った等身大のドラマ性だけが、素朴な楽器の運動に載ってくるにすぎない。そうすることによって、ト短調交響曲は、誇張的な悲劇性ではなく、信仰のパワーに支えられながら、人間の弱さ克服していくための讃歌となるのである。それは、対位法的な響きが露骨に用いられるドラマティックな場面で、特に顕著な特徴であり、ボッセの解釈にとって象徴的なものを成している。

さらに、全体を通した特徴として、響きの受けわたしの美しさや、楽器間の重なりの美しさも、ボッセの演奏では見逃せない。例えば、第1ヴァイオリンとホルンのような遠い関係にある楽器が、きれいに重なっている箇所があるのを提示していたり、ある楽器を起点にして、響きが周囲に拡散していくときの自然な流れが、ゆったりと印象づけられている。決して派手ではないが、粘りづよく、指の先まで神経が行き届いたような演奏である。

【シューベルトの難しさ】

メインのシューベルト『交響曲第2番』は、はじめに断っておくと、なかなか良い演奏であった。しかし、スダーン&東響のような演奏が、そう簡単にできるものではないことも明らかにしてくれた。誤解がないように言っておくと、プロと比較することで、彼らの努力を見くびりたいのではなく、曲の難しさについて言っているのである。

この曲は一見、ストリングスの爽快な運動性をベースに、一挙に押しきれそうな感じがしないこともない。だが、実際にやってみると、それだけでは空疎な響きとなってしまい、バランスがとれないのである。まず、弦五部においては、ベースとなる高度な機動性に加えて、洒落っ気たっぷりな跳躍性が必要だ。スダーンも酒脱なヴィブラートを混ぜつつ、手の込んだリズム設計でギャロップ的な弦ベースを緻密に整えている。管セクションは、こうした弦の動きに、これまた繊細に張りついている。ところが・・・である。シューベルトの書いた管の配置は、弦のラインと密接に関係しているわりに、いわばフリーハンド的であって、緻密とはいえないのである。つまり、室内楽的なものであって、自由がありすぎるのである。

ブルーメン・フィルの管楽器奏者たちは、きっと散々に苦労したであろうと思う。幸い、その苦心のあとは、冒頭部分を除けば、それほど露わになっていないが、それでも注意ぶかく聴けば、節々に窺われるものである。それをあげつらうマネはしないが、昨年の東響の名演は、ほとんど異常ともいえるほどに細かい、スダーンの緻密な弦管のデザインに加え、近年、急速に力をつけてきた管楽器陣の高度な自主性に基づいていたことが、彼らの演奏によって、改めてよくわかったのである。

今回は、良くも悪くも、第2楽章が印象に残っている。アンダンテの優しい主題は、それこそ童心に戻ったかのようなキュートなフォルムをみせていた。既に述べたように、あまりにも子どもじみたナイーヴな響きなってしまったのは問題だが、ヒューマニティの点でいえば、オーケストラ全体の優しい雰囲気を印象づけてくれて気持ちがいい。また、そこが素朴に印象づけられることで、あとの2楽章が、この楽章を基にしたヴァリュエーションのような雰囲気となり、全体の構造が凝縮した印象を与えた。なお、本番がおわり肩の力が抜けたものか、アンコールでビスしたときのほうが、リラックスした響きが余計にその素朴さを際立たせて、耳を惹くものがあった。

メヌエットは両端部分は決然として秀逸だが、トリオでの木管楽器がまた良い味を出していて、両端部分でも、弦の抜けた部分の瑞々しい響きがむしろ印象に残っている。なお、前半では、やや呼吸が浅いものの、クラリネットのリリックな表現力に耳がいったが、後半は、オーボエのほうに分があった。フィナーレは、ややユーモアに欠けるが、じっくり構造を煮詰めていくような演奏で、真っすぐな演奏でいい。

ボッセのシューベルトは、劇場的なスダーンの演奏とは異なり、より時代的なポジションを感じさせるものだ。リズム音型などからはベートーベンの影響も濃厚に感じられ、この曲に関する理解は、明らかに深まったような気がする。ボッセの場合は、起伏もより彫りが深く、バスの重視、第1ヴァイオリンのメロディ・ラインへの明確なこだわりや、トゥッティにおけるボウイングの機能美など、彼にしかできない芸当がしっかり埋め込まれているのに気づいたはずだ。

ボッセが元気であれば、共演は回を重ねていくことになるだろう。素敵なコンビである。ボッセは日本在住ということもあり、アマチュアもたくさん振っているが、言うことを聞かないヨーロッパのプロ連中よりも、素直に自分の音楽と向きあってくれる、日本の若い人たちを相手にしているほうが、ずっとやり甲斐があるのかもしれない。ときどき指揮台に上り損なったり、アプローズのときにしっかり袖まで引っ込まないうちに戻ってきたりしていたが、それでも2本足でしっかり歩行し、元気いっぱいのスクロヴァほどではないしても、壮健なところをみせていたボッセである。

【プログラム】 2009年9月22日

1、メンデルスゾーン 序曲『静かな海と楽しい航海』
2、モーツァルト 交響曲第40番
3、シューベルト 交響曲第2番

 於・杉並公会堂

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