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2009年11月11日 (水)

浜松国際ピアノコンクール 第1次予選 (第4日) 11/11

浜松国際ピアノコンクールも、早いもので第1次予選の4日目です。本日は日本人が4人も集まり、それぞれに注目株なので、楽しみでした。

2番目に登場の【高木竜馬】はまだ16歳ですが、早期から注目される逸材です。バッハは、プレリュードが『マタイ受難曲』の始まったような感じのドラマティックな演奏で、フーガは端正にリズムを浮き立たせていました。総じて、打鍵の美しさが耳を惹きます。ベートーベンはフォルムが的確に押さえられた演奏ですが、スイートな部分と雑な部分の差が激しいように思いました。ショパンもあまり深いルバートは使わず、とりあえず1次は無難に抜けたいというディフェンシヴな印象を受けます。時間も超過し、本領発揮という感じではありません。

その次に弾いた、カナダの【ダレット・ズスコ】のほうが表現がまとまっています。ナクソスから、モラヴェッツという作曲家の録音も出ているようですね。和音もきれいで、適度な重みがあります。この1次予選、ベートーベンの「テレーゼ」を選ぶコンテスタントが多いですが、彼がいちばん妥当性の高い演奏でした。ナイーヴな第1楽章と、諧謔的な第2楽章の対比も面白かった。ただし、リストでは音楽の構成観が甘く、限界が見えた感じもあります。

中国から来た、18歳の【イエ・シーチン】は発見でした。バッハはナチュラルな演奏で、左右のバランスがとれて構造も掴みやすく、テンポ、リズムなども妥当です。ベートーベンは基本線がやや軽いものの、しっとりとした詩情を湛えた第1楽章に対し、決然とした第2楽章は積極的な動きで、食いつきのよい音楽になっています。リストはコーダの昂揚を除いて、ショパンと紙一重のナイーヴな演奏に聴こえました。全体的にパンチが弱い部分がありますが、若年ながら集中力が高くて、内面描写がゆたかである上に、バランスの取れた音楽づくりも耳を惹きます。ジュニアで豊富な実績がありますが、このクラスでも通用しそうな音楽性の持ち主とみました。

夕方のブレイク前は、一長一短のコンテスタントが多かったと思います。

ロシアの【マルガリータ・ムジィチェンコ】は全体的にラフな演奏が目立ちますが、ときどき煌くような音色を聴かせていたので勿体ない感じがしました。ウクライナの【ドミートリ・オニシチェンコ】はときどき、別人のように繊細な演奏になるのだけれど、全体的にかなり粗雑です。相当の腕があるのに惜しい。同じくウクライナの【アリヤ・アクベルゲノワ】は丁寧な演奏を試みているけれど、やや非力な点と、ポロポロと不用意な打鍵が出たり、急に走ったりしてしまって印象を高められない点が、逆に印象に残りました。韓国の【チャン・ソン】はフォルムの精確性で押していきますが、音楽に引っ掛かりがなく流れていってしまう上に、表現に広がりを感じませんでした。

夜の部は、日本人コンテスタントが3人つづきました。

最初に地元出身の【仲田みずほ】が登場しましたが、バッハとハイドンはこれといった驚きはないものの、丁寧に積み上げていく演奏で、よく準備された演奏とみえました。しかし、ショパンは響きがきつい部分があり、呼吸も浅くて、音楽に余裕がありませんでした。【矢島愛子】のバッハは、プレリュードはバスの刻みがレガート気味になって拍節感がなく、舞曲のイメージが弱くなっています。逆にフーガは刻みすぎて、拍の保持が甘い。ベートーベンは忙しなく、溜めがありません。リスト編のシューベルト歌曲という選曲は面白いのですが、旋律線をどう扱うかのアイディアが練れていません。さらに、よく弾けている部分と、そうでない部分の差が激しいように思いました。

19歳の【加藤大樹】は今回、日本のエース格という感じでしょうか。威風堂々として構えの大きなバッハのプレリュードまではよかったのですが、フーガに入って急ぎすぎ、音楽世界に膨らみがなくなりました。ベートーベンもいささか上ずった感じで、もうすこしゆとりがほしいところです。彼もこのラウンド、高木竜馬と同じで本領発揮しているようには見えません。しかし、リストではかなり取り返し、肉厚で懐のふかい旋律美を表現しています。速くて華麗な打鍵など表面的な派手さに捉われず、どっしりとした音楽をつくるように心がければ、ずっといい音楽がつくれると思うのですが・・・。

今回、韓国勢の堂々たる演奏が目立っていますが、【ハン・ユンジョン】の演奏も印象に残ります。まず、ハイドンは適度な重みで、非常に清潔な演奏でした。そのあと、真ん中にバッハを置いたプログラムが功を奏したといえそうです。大事に演奏していったプレリュードは前のハイドンとの比較で、音楽の柔らかさと高貴さが際立ってきますし、次に来るフーガは、ハイドン/バッハのプレリュード/フーガを1つのシーケンスとして考えたときに、いわばベートーベン的な締めとなる面白さがあり、演奏自体もきりっと締まったフォルムが素敵です。『ゴイェスカス』はまともに弾けないだろうと思っていましたが、技術的には意外によくまとめており、「愛と死」の死の部分を強調することで、バッハとの関係性を構築するプログラム構成の妙も指摘できます。シンシナティのコンクールで優勝しているようですが、この人はタダモノではなさそうです。

この日は、ウクライナのコンテスタントも3人が集中しました。そのなかでもっとも有望なのが、この日のトリを飾った【パヴェル・ミンガリョフ】。バッハのプレリュードはミステリアスな感じ。フーガでは、ロシア的といえそうな重い演奏が独特の印象を残します。ハイドンは前に弾いたハン・ユンジョンが素晴らしかっただけに、相対化されて評価が落ちてしまうかもしれません。ロシアものになると人が変わったような感じで、目をつぶっても弾けそうなぐらいの余裕を感じます。これは見事。一聴して実力ありといえる玉ではないものの、まだ底をみせていないので、もうすこし聴いてみたいと思いました。

日本人がたくさん出場した1日でしたが、母国というプレッシャーもあったのか、すこし頼りないパフォーマンスがつづいて残念でした。この日の演奏で、いちばん気に入ったのは、ハン・ユンジョンです。

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