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2009年12月 2日 (水)

ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール 第2次予選 (初日) 12/1

結局、ガスパール・カサド国際チェロ・コンクールの第1次予選は初日しか足を運べませんでしたが、1日から、第2次予選が始まりました。予想どおりというべきか、このラウンドに進出した日本人コンテスタントは大きく減って、僅か4人となっています。第2勢力だった米国も、6名のエントリーが2名に減少。そんな中、韓国のコンテスタントは6名中5名が残り、このコンクールでもやはり強さを見せつけています。あとはもう、いろいろな国籍の人たちが、1人ずつで頑張っている状態です。

私はこの日、【ニ・タオ】を除く10人の演奏を聴くことができました。

印象的だった人は、4名います。まずは、日本の【上村文乃】。この方は1次予選で聴いたなかでは、唯一、好印象をもったコンテスタントでしたが、そのイメージが間違いではなかったことを証明してくれました。この日の11人のなかに入っても、私としてはベスト・パフォーマーとして挙げるのに抵抗はありません。まず、彼女は耳がよく、自分の演奏を客観的にみつめながら、磨きぬいていくことができる良質な音楽家です。そのベースのうえに立って、いろいろと工夫を凝らした表現がなされています。

最初のボッケリーニでは、伴奏の丹千尋との息のあったパフォーマンスで、伸びやかな歌ごころを披露してくれました。次に演奏した、武満徹の『オリオン』が絶品でした。未だ20歳にならない年齢なのですが、まったく動じることなく、ゆったりと、恍惚とした武満らしい世界観を紡ぎあげていきます。ほとんどピアノの側に顔を向けたりしないのですが、それでもちゃんと相手の音を受け取っていることを、背中で語っています(ピアノからは、きっとそう見えるはずです)。内部奏法などを駆使したピアノの響きと、彼女のチェロの音色がよくマッチして、立体的に響きが組み上がっていくのがわかります。

リラックスしたアダージョが印象的なシューマンも聴かせたし、カサドの組曲も堂々として、彫りが深く、技術的なムラも少なかったです。最後のチャイコフスキーはややカンタービレが浅いような気もしましたが、全体的に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。まだ甘い部分もあるけれど、聴き手に訴えるものがある人です。

日本人ではもうひとり、【辻本玲】も良かったと思います。上村と同じく、彼も室内楽をよくやっているはずなのですが、彼女が対話型の穏和なチェリストとするなら、辻本は相手のことをガッチリ組み止めて、自分なりの反応を目いっぱいに返していく反転攻勢型といえるのではないでしょうか。ミスも多く、やや荒っぽいところもあるのですが、それは攻めに攻めた結果であることは明白で、それならば聴いているほうも納得がいくのです。辻本は日本の若い音楽家としては珍しく、間違えることを恐れない青年だといえるでしょう。

カサド、ドビュッシー、ブリテンと弾きましたが、特にドビュッシーが良かったのではないでしょうか。伴奏の須関裕子が素晴らしく、彼女の洒落たリードに導かれて辻本のつくる音楽は造型が独特で、かつ、大胆な構成把握が目を惹きます。音量も豊富ですが、力づくにはならず、ソット・ヴォーチェを使ったりして、なかなかロマンティックな演奏です。ドビュッシーでは、1つ1つのフレーズが深く磨きこまれており、味わいが深かったと思います。

それを聴いてしまっただけに、ブリテンでは、やや磨きこみが足りなかったのが目立ちました。技術的には、この日、演奏したなかでもトップをいくかもしれませんし、音色にも厚みがあります。大胆なアプローチは結構なのですが、こころなし慎重さを加えることができれば、より深い感銘を与える演奏になると思います。

最後に演奏したリトアニアの【ウルバ・マリウス】も、素晴らしい演奏を披露しました。ピアノの蓋を大きく開けたことから、パワフルな演奏をイメージしましたが、正しくそのとおりのマッチョな演奏。しかし、ただバリバリ弾くタイプではなく、とてもナイーヴで、甘みのある演奏スタイルです。最初のフォーレ『悲歌』を聴いたときは、非常に深いところから掘り出してきた音色の黒光りする雰囲気や、最後の1拍まできれいに保持する歌い方の丁寧さに打たれ、この人が優勝してもおかしくないと思いました。

カサドは他のコンテスタントと比べると、独特なスコア・リーディングが窺われ、根太い旋律線を朴訥に歌い上げましたが、やや単調になった面も指摘できます。そのイメージはショスタコーヴィチに入っても受け継がれましたが、ラルゴあたりから変化がついてきて、再び彼の歌いまわしの面白さに惹きつけられます。結びの部分では、ピアノの音色をよく聴いて、ピッチカートで部分的にユニゾンする響きのたおやかなこと。第2楽章は、決然としたカンタービレが踊っており、非常に素晴らしかったと思います。

ステージ・マナー等にいささか問題はありますが、とても熱心に演奏しますし、私としては好きなタイプです。

最後の1人は、黒にちかい焦げ茶が強く出たチェロをもつ、ルーマニアの【マリカ・ミハイ】です。彼の取捨選択は難しいのですが、ノン・ヴィブラートのベースを徹底しながら、必要な曲、もしくは、部分では、ヴィブラートを意識的に操り、その点のコントロールでは誰よりも優れていました。ただし、その奏法はリスクが大きく、外すところでは大きく外していました。歌い方は衒学的で、やや実感に欠けるものの、総じて納得のいくものではあります。ただし、先述の音程の問題もあり、素晴らしいところでは誰もが足もとにも及ばないほどなのに、崩れた部分のダメージはかなり大きく、その差がとても激しいところに注文がつきます。

あとは、少しずつコメントしていきます。【長谷川彰子】は1次では退屈と書きましたが、2次に入って、印象がかなり好転しました。シューマンが得意のようで、中音域での多彩な歌いまわしは耳を惹きます。ただし、それ以外のことができないため、表現が一本調子に聴こえます。先日、伴奏者がいいと書きましたが、大野真由子という人でした。ドビュッシーみたいのを弾くと音色の不足が窺われますが、それでも、あわせが巧いですね。

イスラエルの【コールマン・ミハル】は、技術的な安定度はあり、表現にまとまりがありますが、全体的に内向的な表現となり、縮こまった演奏に聴こえました。彼女は、ウェスト=イースタン・ディヴァン・オケに、ユダヤ人側から参加しているそうです。【岡本侑也】は1994年生まれ、中学3年生というには驚くべき完成度で、ソツなく、丁寧に弾いていますが、一方でディフェンシヴな姿勢も窺われ、音楽から生命感が浮かんできません。いかにも、子どもの演奏という感じを出なかったとしておきます。

【キム・アリム】【モンテス・マルセロ】【シム・ヨンスク】は圏外としておきます。

ここまでを聴くかぎりでは、いろいろな個性と出会えて面白いことは面白いのですが、やはり、超高レヴェルとはいえないように思います。本当は、辻本ぐらいのコンテスタントが平均になるぐらいのレヴェルを望みたいのですが、そうもいかないのでしょうかね・・・。

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