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2009年12月 2日 (水)

ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール 第2次予選 (2日目) 12/2

ガスパール・カサド国際チェロ・コンクールは、第2次予選の2日目が終わりましたので、そろそろ本選の進出者がわかります。この日は3人目のマシュー・アーレン以降、最後までつきあいましたが、結果は確認せずに帰ってきてしまいました。この記事を書き始めた時点では、まだ、HP上でも発表がなされていないようです。

この日の演奏は一長一短が激しく、こころに引っ掛かる演奏が少なかったと言えます。そのなかで、一応、イタリアの【ウンベルト・クレリッチ】が良かったとしておきたいと思います。1981年生まれと年長の彼だけに、表現の深みには一日の長がありました。エンジンのかかりが悪く、カサドの組曲は第2楽章までは不安定な演奏となりましたが、磨けば光る玉だと思っていました。そこへもってきて、第3楽章、すべてのコンテスタントのなかで唯一、対位法的な構造を明瞭に浮かび上がらせる演奏をみせたことで、すべてを取り返したのです。

つづくシューベルトの『アルペッジョーネ・ソナタ』は、深彫りのしっかりした演奏ができました。よくトレーニングされており、響きが上擦ったりすることもなく、大胆な起伏をつけたパフォーマンスが見事でした。技術偏重にはならず、シューベルトのもつリリカルな詩情をきれいに浮かび上がらせます。審査委員の堤氏ほどではないとしても、スリリングなアタックも決まって、気持ちのよい演奏でした。

ブラームスはその雰囲気を受け継ぎ、アダージョ・アフェトゥオーソ(第2楽章)のみの演奏です。ここの部分、これまでに何人かのコンテスタントが弾いたものの、全て満足のいくものではありませんでした。硬質で、柔らかみのないピッチカートが無機質に響くものばかりで、詩情も何もあったものではなく、辟易していたのですが、ようやく彼がふくよかな、厚みのあるピッチカートを丁寧に聴かせてくれました。

ただ、慈愛に満ちたトリオは良かったものの、再び主部に戻ったときに、例のピッチカートをすこし強めに打とうとしたときに、すこし粗くなってしまったのが難点です。祖国の作曲家、ルイジ・ダッラピッコラの『シャコンヌ、間奏曲とアダージョ』は、特に表記がないのですが、シャコンヌの部分だけの演奏だったと思います。これは可もなく不可もなくというところでしょうか。

フランスの【トリスタン・コルヌ】はお国柄か、やはり音色というところにポイントを置いた演奏になりました。特に、カサドではその特質が効いた部分もありますが、場面によって、浅いところで響いたり、深いところで響いたり、その質自体を大きく切り替えてしまっていたのは、いいことなのかどうかわかりません。

この響きをうまく使えば、ドイツものはいいのではないかと思っていましたが、シューマンは歌いまわしが平板で、それなりによく弾けてはいるものの、表現のヴァリュエーションが不足していました。伴奏の小森田が、バラド風、ラプソディ風などとフォルムを描き分けているのに対して、チェロのほうで、それに対応する歌い分けがまったくなかったのは物足りないように思います。ラヴェルは、なにも印象づけらないまま、通りすぎた感じ。デュティユーは、いかにも得意げに完璧な技巧で貫きましたが、技巧的な部分でいささか力づくの面がみられたことも確かです。

スイスの【リオネル・コルテ】は、昨日のミハイ・マリカほどではないものの、ヴィブラートを抑制した演奏スタイルでした。マリカと比べると音程的な外しは少ないものの、一方で、全体的に表現が穏やかな感じではあります。最初にブラームスのソナタをガッツリと聴かせる作戦でしたが、このラウンドまで進んだコンテスタントは第2楽章までのパターンが多かったこともあり、これはある程度、当たったと思います。

最初は「声」が小さく、「おや?」と思いましたが、途中でベースの美しさに気づくと、ああ、そういうことかと納得させられました。ただし、マリカと比べても、表現の厚みでは劣っており、曲自体も非常に難しいものを選んでいるため、少しずつ舌足らずな印象となったのも否めないところです。ルトスワフスキは、弾いたことに意義がある感じでした。カサドは途中までよかったですが、第3楽章になって急に音程がとれなくなり、演奏が止まりそうになった一瞬もみられました。一応、最後まで演奏しましたが、後味のわるい結果になりました。

米国の【マシュー・アーレン】は1992年生まれと、若年のコンテスタントです。しかし、場慣れしているのか、堂々としたパフォーマンスです。ボッケリーニの演奏は柔和で、テクニックに柔らかさがありました。カサドに入っても、最初の楽章はリラックスしたパフォーマンスでよかったのですが、第2楽章で急に速くなってしまい、その後の展開がつまってしまった印象があります。ドビュッシーは中庸。コダーイの無伴奏はそれなりに見事なテクニックなのですが、ケラスがやったような演奏を知っている身としては、「それがどうした?」という程度に感じられてしまいます。

他の人は、一芸の世界とでもいうべきでしょうか。ポーランドの【マグダレーナ・ボヤノヴィッチ】は、ペンデレツキとバウアーの無伴奏は、まことに練度の高い演奏で感心しました。米国の【ジャクリーヌ・チェ】は、ブリテンが良かったと思います。しかし、1、2、5楽章の演奏では、この作品の構造的な味わいが出てこないし、演奏自体、よく弾けてはいるものの驚きを与えるレヴェルまでは仕上がっていませんでした。マーヤ・ボグダノヴィッチのように、はじけた演奏でもなかった。韓国の【チェ・ミンジ】は、選択した曲目は良かったと思います(ロカテッリとリヒャルト・シュトラウス)。しかし、総じて拍節感がなく、作品のもつフォルムの味わいや、その変化を表現できていなかったのが難点です。

一から叩きなおせば、なかなか良さそうな人も中にはあったのですが、どうもこの日のグループは技術論に偏りすぎており、もうひとつ訴えるものが足りない人が多かったように思います。さて、飛び抜けた人がいないため、審査は難航するかもしれませんが、どういう結果になるのでしょうか?

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コメント

由々しき事態になっているようなのでブログに書きました。アリスさんも賛同いただければと思います。
http://pilsner.blog100.fc2.com/blog-entry-83.html

ご注進、ありがとうございます。私のような門外漢には、ことの重大性が具体的には、イマイチ理解できていないところがありますが、何らかの形で、パブコメは送付したいと思います。

ただ、パブコメは「意見は聞きました」というためだけのアリバイ的なものなので、あまり期待はしていないのですが、とにかく、やるだけやってみることは必要と思います。

仕分けのところで、新国立劇場、国立劇場おきなわの運営や、海外派遣事業、海外交流事業などについては、正直、仕分け人の指摘は正しいと思いました。

しかし、学校派遣のところは理由づけも強引であり、筋が通っていないように思います。外国では、音楽教育が犯罪防止や青少年育成に大いに貢献することが証明されており、採算性のみに基づき、こうした事業を切り捨てることは、あらゆる意味で非効率かと考えます。

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