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2010年2月 2日 (火)

新国立劇場 新シーズン展望

事業仕分けでも主たる仕分け対象に指定された新国立劇場が、来シーズンのプログラムを発表した。この様子をみる限り、運営財団も一応、来季は持ち堪えたということになるのだろうか。来季からは、新しい芸術監督である尾高忠明(オペラ部門)、デイヴィッド・ビントレー(バレエ部門)を迎えての最初のシーズンとなるので、注目が集まるところだ。

【オペラ部門】

まず、オペラ部門はここ数シーズン、演出、キャスト、指揮のバランスが悪いことが問題で、そのため、私としては、ほとんど足を運びたくなる演目がなかった。来シーズンは、その傾向がすこし改善されたように見受けられる。一方、欧米の劇場と比べると、かなり保守的なプログラミングであることは相変わらずであり、値上げ傾向のみられる席割りも歓迎はできない。ただ、需要と供給の原則からいけば、完売率の高い現在の状況からみたときに、若干の値上げは決して不合理とは言えない(とはいえ、その完売という状況が、どのようにして起こるのかについては問題もありそうなのだが)。

来季も、正規の演目は全部で10である。このうち、プレミエは4本(うち1本は海外との共同制作)を数える。『夕鶴』を除いた、すべての演目は独墺伊のものに限られている。このうち、日本での上演が稀であるものは、シーズン最初のリヒャルト・シュトラウス『アラベッラ』と、プッチーニ『マノン・レスコー』である。言うまでもなく、海外では当たり前の演目だ。また、ワーグナー作品のなかでは、なぜか上演を避けていた『トリスタンとイゾルデ』が、ようやく新国の舞台にかかることになった。

【アラベッラとトリスタン】

まず、シーズン開幕を飾る『アラベッラ』は、新国でも『ホフマン物語』などで優れた演出を披露しているフィリップ・アルローいよるプロダクションだ。華やかな貴族の館を舞台とするだけに、重要となる衣裳を森英恵が担当することが発表されている。単純に、アンティックなファッション・ショーとしてみても楽しめる舞台となるのだろうか。指揮には、独墺ものに力強い実績を挙げるウルフ・シルマーが選ばれており、歌手も重要な役には、新国で既に実績を挙げた歌い手を配している。万全の構えだ。

リヒャルト・シュトラウスは、故若杉氏が情熱を傾けた演目でもあり、彼へのオマージュという意味があるのかもしれない。

トリスタンは、欧州で非常に高く評価されるデイヴィッド・マクヴィカーの演出で、これも鉄板だ。指揮者に、大野和士を確保したのも話題になりそう。10年以上の歳月を隔てての再登場となる大野は、現在、小澤征爾を除けば日本人でもっとも成功している指揮者で、コンサート、オペラの両面に強い。大野-マクヴィカーは欧州でもともに仕事をしており、よく知った仲であると思われる。

題名役は、世界的なワーグナー歌いのステファン・グールド(私の好きなタイプではないが)と、新国でも頻りに起用されて評価の高いイレーネ・テオリンのコンビ。クルヴェナールにユッカ・ラシライネン、ブランゲーネにエレナ・ツィトコワと贅沢な布陣になっている。

【そのほかの公演】

そのほかでは、いくつか楽しみなポイントが配されている。まず、アルロー演出のジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』では、ジェラール役に若きスター歌手の一角、アルベルト・ガザーレが起用されている。ミハイル・アガフォノフ、ノルマ・ファンティーニと揃え、海外劇場の公演並みのキャストになっている。

新国初期の成功した舞台のひとつに数えられるルカ・ロンコーニ演出のヴィヴィッドな『トラヴィアータ』は、既に何度も上演を積み重ねてきた舞台である。キャストが豪華で、ヴィオレッタ役のパトリッツィア・チョーフィ、パパ・ジェルモン役のルーチョ・ガッロも注目なのだが、アルフレード役のキム・ウキョンは現在、欧州で飛ぶ鳥落とす勢いの韓国のテノールだけに期待が集まる。指揮に広上淳一が起用されたのは賛否があるが、私としては歓迎する。

プレミエの『マノン・レスコー』は、指揮にリッカルド・フリッツァが起用される。いまではMETをはじめとする世界の主要劇場に進出しているフリッツァを、出世するギリギリ直前に捉まえて手放さない新国の努力に敬意を表する。演出にジルベール・デフロを起用したのも注目に値するだろう。マノン、デ・グリュー、マノンの兄が、それぞれブルガリア、アルゼンチン、スロヴァキアと多国籍なキャスティング。マノン役のスヴェトラ・ヴァシリエヴァは録音を聴くかぎり、かなり鋭い声の持ち主のようだ(私は気に入らない)。

ジョナサン・ミラー演出の『ばらの騎士』も、安定感のある舞台で上演が重ねられている。今回は、自分のオケで同演目の上演を成功に導いたNJPのクリスティアン・アルミンクが、新国に初登場。NJPのセミ・ステージ公演や二期会のプロダクションでは優れた舞台さばきを見せており、ここでも計算が立ちやすい。マリシャリン役にはヴェルザー=メストが強烈な印象を残したチューリヒ歌劇場の来日公演で、見事なパフォーマンスを見せたカミラ・ニルントが起用された。

プレミエとなる『コジ・ファン・トゥッテ』では、パオロ・カリニャーニがピットに入る。日本では、紀尾井シンフォニエッタ東京や読響に登場し、ピットでの招聘が待望されていたが、ここでようやく実現するのは幸甚だ。演出のダミアーノ・ミキエレットも評判のいい人物なので、これは注目に値する。キャストでは、世界でもっとも技巧的なバリトン、ローマン・トレーケルがアルフォンソ役で登場するのが大きな話題となりそうである。

シーズン最後の『マダム・バタフライ』では、イヴ・アベルの登場に驚いた。アベルは、英仏独などの劇場で引っ張りだこの若手指揮者で、私が実際に聴いてみたいと望んでいた音楽家のひとりだ。ウィーンから甲斐栄次郎が呼び戻されてシャープレス役で登場するのを除けば、キャストに期待感はなく、栗山演出も無難だろうが、彼の指揮ぶりだけでも拝んでおきたい。

【補足】

英国に縁の深い尾高だけに、ブリテンなどのイギリスものが入ってくることも予想されたが、最初のシーズンは意外なゼロ。例えば新国研修所の公演では、ブリテン『アルバート・ヘリング』の低予算、かつ、優れた上演もあったので、今後のプログラミングに期待したいところだ。また、若杉時代には『黒船』『修善寺物語』、池辺の新作が取り上げられた日本人作品では、ポピュラーな『夕鶴』のみが上演されるというのも寂しい。また、ここ数シーズンの間には、『軍人たち』『ヴォツェック』『ムツェンスク郡のマクベス夫人』など、日本の上演史に薄い作品も取り扱っていただけに、そうした面で後退した面も見受けられるのだが、一方、最初に述べたように、上演ごとの中身におけるバランスのよさが印象づけられる。

【バレエ部門】

バレエ部門は、6つのプロダクションを用意する。このうち、ビントレーのスペシャリティが3つ用意された。マクミラン、フォーキン、バランシンなどが固まり、これまでよりも、柔軟なプログラム構成がみえる。ビントレーの振付では、バーミンガムでコンビを組むポール・マーフィが起用される方針のようで、これも歓迎である。ビントレーが新国のために振り付けた『アラディン』は素晴らしいプロダクションであっただけに、早くも再演されるのは幸甚だ。初演に若干手が加えられるというのも、ビントレーを監督に迎えたメリットであろう。こうして我々は、いちど生み出されたプロダクションが熟成され、洗練されていく過程を眺めることができる。

絶滅危惧種の動物たちが活躍する『ペンギン・カフェ』も、我々に身近なレパートリーにはあまりない作品なので、楽しみがある。昨年、K-バレエがアシュトンの『ピーターラビットと仲間たち』を上演しているが、それにちかいクオリティの作品であろうと想像する。日本人のもつバレエ観を、すこし改造する試みとなるのかもしれない。既にレパートリーとなっているバランシン演出の『シンフォニー・イン・C』や、新制作となるフォーキン演出の『火の鳥』とトリプル・ビルになり、様々な関心を引きつける公演になるだろう。

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