高松国際ピアノコンクール ロシアのヤコブレフが優勝
高松国際ピアノコンクールは27日までに本選まで終了し、ロシアのアレクサンドル・ヤコブレフが優勝した。本選は3次予選を通過した6人で争われ、堤俊作の指揮によるTIPCオーケストラ(臨時編成)の演奏をバックに、協奏曲の形式で優勝を競った。
その結果、第1位を獲得したのは、ロシアのアレクサンドル・ヤコブレフである。音質的に風呂桶的な生音のクセが処理されておらず、音質は決して良くないこともあるが、YOU TUBEに3分強のハイライト映像が公開されているのをみるかぎり、正直、イマイチな印象は否めない。ベートーベンの曲を弾いているが、この前のチッコリーニと同じ曲だけに、ペラペラの薄っぺらに聴こえるのは仕方のないところ。音色の鮮やかさなどに魅力はあるが、全体的にレガートがきつく、テンポ感も走りすぎており、フォルムが安定しない印象を受ける。その代わり、バロック的な印象が強く出ているのは面白い。第3次のモーツァルトもなかなか良さげだったので、それも加味されているかもしれない。
100人を越えるエントリーから唯一、本選に残った日本人の石村純が、チャイコフスキーの協奏曲第1番を弾いて第2位となった。彼女はファツィオーリ使用のメリットも生かしており、輝かしいサウンドが眩しくて、磨けば光る玉という印象を抱いた。しかし、現時点では1拍ごとの打鍵が重苦しすぎて、音楽的な風景に広がりがない。その点、爽やかな歌ごころに満ちた3次のモーツァルトが、私には魅力的に思える。
ラフマニノフの2番で勝負したリー・ユン-ヤンが第3位。本選での演奏では彼がいちばんマシに聴こえるものの、それでも独特の表情の薄さは、音楽の濃厚なロマン性によっても補われていないようだ。
4位以下のメンバーでは、ボイロチニコフ(曲目はチャイコフスキー)は、石村と同タイプであるが、かなりルバートが激しく、全体的に強引な曲の運びが印象に残る。そのわりに、演奏から感じられる表情が意外にゆたかでない。ツベトコフもチャイコフスキー。作品をパーツごとに分けてしまう欠点があるが、わりに丁寧な曲づくりで分析的だ。音楽性はいちばん私の好みだが、速いアルペッジョなどを弾くときにややバラツキが目立つ欠点が激しい。プリヴァルスカヤもラフマニノフだが、リーよりもバリバリ弾くタイプ。その意気や好しというところだが、レガートがきつく、拍の重みというものが足りないように思われる。
上記の感想からいって、ややレヴェルに難ありという印象は否めないが、といって、YOU TUBEの音源(しかも数分間の)だけでは、何も語れないのは言うまでもない。くれぐれも、私の見立てちがいであることを祈るばかりだ。
自治体が主導しているコンクールとしては、浜松や仙台の優れたコンペティションがあるが、民間主導のコンペティションとしては、日本では、この高松国際と、八王子のカザルス・コンクールがもっとも成功している例だろう。今回も、無事にコンペティションが終了したことを喜びたい。
なお、優勝者には賞金の100万円のほか、国内外のオーケストラとの共演、国内外のホールでのリサイタル権が副賞として与えられることになっている。
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このコンクールを全日程聴きとおし、感想をブログに公開した者です。
私はピアノ専門の人間ではなく、コンクールを聴いたのもはじめてですが、三次審査以降のコンチェルトに大変不満を感じました。
というのも、香川、というか四国にはまともなプロのオーケストラがなく、tipcオーケストラでもロイヤルチェンバーと瀬戸内フィルのメンバーだけでも足りなかったのか、アマチュアの高松交響楽団のメンバーまで入っての急造オーケストラで、伴奏のレベルがあまりに低すぎて、ピアニストの演奏に集中できませんでした。
他のコンクールではどうなんでしょうか?私は仮にも「国際」と名乗るコンクールで、セミプロとアマチュアが半分以上占めるオケが伴奏なんてどうかしていると思うのですが…こんなコンクール作る前に他にやることあるだろうと。
投稿: sasaki | 2010年3月30日 (火) 20時37分
ご意見をお寄せくださいまして、ありがとうございます。しかしながら、私は伴奏オーケストラの問題だけで、コンペティションを批判するのは正しい態度とは思いません。
仰るとおり、そのような構成による伴奏は珍しく、伴奏水準は決して高くはないでしょうが、地元オーケストラを含む構成による伴奏オーケストラは、意義ぶかい面もありますね。中小規模のコンペティションでは、そもそもオケ審査ができない(ピアノや室内楽での伴奏をする)ところもあるなかで、高松では3次と本選でオケ審査を実施しており、頑張っていると思います。
意義深ければいいということもありませんが、たとえ有名なコンクール、チャイコフスキー・コンクールや、辻井伸行の優勝したヴァン・クライバーン・コンクールであっても、伴奏オケは準備が行き届いていないことが読み取れます。前者はフォートワース響、後者はモスクワにあるオケのメンバーによる臨時オケで、いずれも歴としたプロではありますが、近年のコンペにおける伴奏は酷いものでした。
高松響の演奏会への出演は、コンペティションの副賞にも入っていたのではないでしょうか。映像をみる限り、かなり活きのいい演奏ではあるものの、一生懸命に弾いており、コンテスタントの演奏意図を十二分に反映しているようにみえます。
実際、ホールで聴いておられればストレスもあったでしょうが、このオケ自体がコンクールの癌とは言えないように思われます。
投稿: アリス | 2010年3月31日 (水) 00時08分