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2010年4月30日 (金)

ラ・フォル・ジュルネ エル=バシャの公演についてのメモ バッハ:平均律 & ショパン:プレリュード 【353】

今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」も、周辺イヴェント等が始まり、本日は前夜祭、明日はスペシャル・ナイトのイベントが行われ、一気に華やいでいく。私は仕事の都合で、4日の公演を中心に楽しむことになった。ショパンがメインとなる今年の「熱狂の日」だが、私の聴く公演は、どちらかといえばリストがメインである。

私が聴く公演のなかで、もっとも入り組んだ構造が構築されているのは、エル=バシャによる、バッハのいわゆる「平均律」とショパンのプレリュードを組み合わせた公演【353】である。どういう組み立てなのか、現場で考えるのは難しそうなので、ここだけは予習を入れておくことにした。NMLのプレイリストを使い、ジョアン・カルロス・マルティンスのバッハと、グレゴリー・ソコロフのショパンを組み合わせ、エル=バシャの構成に合わせて聴いてみた。

演奏会は、バッハの嬰ハ長調による(BWV872)で始まる。これは、組み合わされるショパンのプレリュードでは使われていない調である。静かな海の上でのんびり揺られるようなプレリュードに対して、典型的で伸びやかなフーガの構造をもつ。ショパンは、15番以降のフラット系が順に演奏される。変ハ長調とは異名同音調となる(op.28-15)でスタートするので、なるほど違和感がない。この曲は「雨だれ」のニックネームで知られるが、前半は次の(BWV867)も含め、メロディーのよく知られたキャッチーなものを持ってきている。その(BWV867)は変ロ短調で、変ニ長調とは平行調である。

次のショパンの16番は、同じく変ロ短調である。この調はバロックでは陰鬱なイメージでもって受け取られたそうだが、ショパンの時代では、その重みがかえって作品に深みを与えるものとして、内面を掘り下げるのに愛用され、代表的なソナタにも用いられているのは言うまでもない。バッハの作品は、それを先取りするかのような内省的な美質を誇る。一方、ショパンのほうは、ポーランド人気質の激しい精神性が迸る名技性あふれる作品である。

ここからは、同じ調による比較がつづく。属調平行調を辿って変イ長調に転換し、バッハの(BWV862)へ移ったあと、ショパンの17番も同じ調である。変イ長調はバロック時代では扱いにくい調のひとつだったようだが、このバッハの曲はフーガの構造を生かし、きわめて明快なフォルムを描く。対して、調のもつ硬さを生かしてくぐもった響きをつくり、温和な優しさをほんのりと醸し出すショパンの発想はユニークである。

そのあとは、平行調へ横滑りしてヘ短調(BWV857)。規模がわりに大きく、内面も深く掘り下げられる作品であるため、前半のヤマ場的な雰囲気をもつだろう。ショパンも同じ(18番)だが、バッハが長く、シンプルな宗教的コラールのような雰囲気で封じ込めた信仰心を、技術的にも内面的にも凝縮したドラマ性として発散している。属調平行調に転じて、(BWV876)は変ホ長調。バッハの作品は自由な感じと、引き締まった構造美が同居しているように思われ、フーガはシンプルを通り越して無邪気。ショパンの19番も同じ調だが、同じようにシンプルで、無邪気ともいえる語法がみえる。ベートーベンのピアノ協奏曲第5番の終楽章と雰囲気が似ているのは、もちろん偶然ではないだろう。

やはり平行調を滑って、ハ短調へ(BWV847)。バッハの曲は、正にチェンバロの機能を最大限に生かしたハイテクな感じのナンバー。ショパンの20番も同じ調であるが、バッハが2番目のナンバーにすぎないのに対して、こちらは最後のグループに入っているだけあって、かなり濃厚なロマン性が浮かんでいる。パターン化しているが、今度も属調平行調へ移って(BWV866)の変ロ長調を訪れると、ショパンの21番も同じ調だ。バッハの時代では、かなり華やかであったろう曲調が輝く前者に対し、同じ調でもショパンのほうは随分と美麗で、女性的な(フェミニストに怒られそうな表現!)優しい広がりがある。

パターンに従い、平行調でト短調へ行き(BWV885)、ショパンの22番も同じ。バッハが内に秘めたものを、モルト・アジタートによるショパンの曲は激しく表出する。バッハはこの調のナンバーが規模が大きく、静かなる後半のヤマ場となるはずだ。属調平行調を辿り、ヘ長調の(BWV856)と、ショパンの23番。バッハは容易く管弦楽に移りそうな構造美が現れる1曲であるが、ショパンはその必要すら感じさせない神秘的で、優美な旋回的なフォルムを示す。

最後も平行調のニ短調に移り、ショパンと同じ調である。バッハは6曲を1セットとして捉えることができるが、この曲は最初のグループの最後に当たるため、ショパンのプレリュードの終曲と性格が対応する。バッハの真摯なフーガによる終結と、ショパンの華やかなフィナーレは、しかし、どこかで息があっている。

こうして聴いてみると、ショパンのバッハからの影響は一目瞭然であるが、他方、同じ調でもかなり異なったセンスを示すナンバーもあり、対比が面白い。私などよりもピアノ演奏に詳しい人たちが聴けば、ずっと豊かな実りを得られるにちがいないコンサートである。和声職人のエル=バシャが奏でるのだから、まず問題はない。非常に楽しみなコンサートである。

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