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2010年5月24日 (月)

仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第1日 5/23

仙台国際音楽コンクールの予選、映像配信がようやくスタートした。全部聴いている時間はとてもないようなので、予選は第1楽章だけを聴いて印象を書くというカタチで、コンペティションを見守りたいと思う。この第1ラウンドは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲のうち、K216、K218、K219のいずれかから1つを選び、全楽章を演奏する。伴奏はミニ・オーケストラが担当するが、弦のプルトが削られている。

【No.28 レジ・パパ ロシア】

曲目:モーツァルト 協奏曲第3番 K216

立ち上がりはなかなかふくよかな音色でいいと思ったが、その後は、不自然なヴィブラートの抑制が目立つ。リラックスして弾けているうちはいいが、高音や勝負どころになると響きが硬くなり、ヴィブラートのコントロールが必要以上に厳しくなる。そのため、モーツァルトのシンプルな作品であるにもかかわらず、音楽に余裕がないように聴こえるし、音色にもふくよかさが失われる。そのため、カデンツァもなんとなく通りすぎる感じになる。全体的な構成観も甘く、良いところが見つからなかった。

【No.6 チェ・ガヒョン 韓国】

曲目:モーツァルト 協奏曲第3番 K216

立ち上がりに大きな瑕をつくり、序盤は安定感に欠けたが、尻上がりに調子を上げる。中音域から高音域にかけての重心の低い、広がりのある響きが武器となる。起点のアクセントを強調したり、細かい伸縮を入れて歌い方にも工夫があるが、この日は、それがうまく決まらないようだ。カデンツァでは気持ち良さそうにテンポを揺すり、自分なりのペースをつくっているのはいいが、無駄に動かしすぎな印象もなくはない。

【No.01 アナスタシア・アガポワ ロシア】

曲目:モーツァルト 協奏曲第3番 K216

この人は腰高なしっかりした響きを奏でることができるものの、演奏に基本的なリズム感がなく、音楽の推進力がないのが決定的な弱点である。つまり、音を出すという行為と、音楽をつくるという行為がバラバラに存在しているのだ。そのため、断片的にはふくよかで潤いのある響きに聴こえても、それらのパーツに関係性ができないために感興が盛り上がらないのである。カデンツァは一気呵成であり、その分、真っすぐで気風がいい感じになった。

【No.12 ジェイソン・イソクソン 米国】

曲目:モーツァルト 協奏曲第4番 K218

出だしは行進曲のような整然とした響きで、爽やかに決める。愛器のグァルネリ・デル・マントゥアの特色を生かした音色の爽やかさがそれを手助けするし、作品的にもこのナンバーがあっているだろう。最初の予選ということでやや慎重な運びのようにも感じられるが、楽曲のフォルムの変化を丁寧に捉え、強引にならない演奏なのはポイントが高い。全体にソツがなく、聴き手を惹きつけるものもある。カデンツァはやや単純に行きすぎており、ボウイングや、ルバートなどに工夫がないため、非常に呼吸の浅い音楽になっている。

その点、アンダンテ・カンタービレの緩徐楽章は(興味があったので第2楽章まで聴いてみた)歌ごころが研ぎ澄まれており、申し分なく美しいといえるだろう。ゆったりとしたヴィブラートが効いており、ほんのりとリズムに乗って、柔らかい楽想を丹念に紡ぐ。しかし、カデンツァになると、やはり一工夫たりず、ただ響きがきれいであるだけだという点が惜しまれる。特に、鳥の声でも何でも想像しやすいはずの、最後のトレモロに芸がなさすぎる。

【No.36 魚水 由里 日本】

曲目:協奏曲第5番 K219

瞑想的な深い立ち上がりで、まずつよく自分を印象づけた魚水は、ヴィオラのように深い音色が武器である。急速なフレーズや、細やかなフレーズになると技術の器用さがないことが目立ち、急に鼻づまりのようになって、余裕のない響きになるのが惜しい。また、この(K219)はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲のなかでも、特に華やかな表現性が求められる作品であるが、そのような音楽に適性を感じない。カデンツァは張りつめた感じで、いっぱいいっぱいに聴こえた。

【No.39 ヤン・ユンジョン 韓国】

曲目:協奏曲第4番 K218

音色は爽やかで、低カロリー。同曲を弾いたイソクソンと比べると、音色や基本的なスキルでは劣るが、演奏の構成にはメリハリがあり、音楽に生気がある。周りの音を聴く耳にも優れており、自分なりの音楽を追いながらも、微妙に揺らぐ伴奏に対して瞬時にアジャストしながら、出力していく柔軟性が窺われる。カデンツァは澱みなく快活な流れだが、抑えた叙情性がかえって聴き手の注意を喚起するもので、優れた演奏であるといえようか。

【No.32 マルヴィナ・ソフノフスキ スイス/ポーランド】

曲目:協奏曲第4番 K218

同曲を弾いたこれまでの2人とは異なり、冒頭からオーケストラと一緒に弾き始めるスタイルで演奏した。若干、速めのテンポを要求しているが、これは許容範囲。冒頭、オケに加わったせいか、響きは華やかなほうであるにもかかわらず、独奏の入りはナチュラルで、バックに素早く調和できたため、序盤の流れは作戦勝ちといえるだろう。その効果が切れて、中盤、やや停滞するが、テンションの高いスリリングな歌い方で盛り返し、バロック時代の作品を思わせるカデンツァのキビキビした音楽づくりで、一気に聴き手を魅了した。

【No.25 永井 公美子 日本】

曲目:協奏曲第3番 K.216

ネット配信ではわかりづらいが、生で聴くと、(どこかから音が来るのではなく)ヴァイオリンそのものが歌っているような聴こえ方をするはずだ。演奏は劇的な構図を積極的に追っており、これまでのコンテスタントのなかでは、もっとも考えのある演奏である。響きも総じてふくよかで潤いに満ちているが、アタックも適度に攻めており、特にカデンツァは深いカンタービレを掘り起こす、大胆な切り込みを見せている。良いヴァイオリニストである。

【No.22 黒坂 由香里 日本】

曲目:協奏曲第3番 K.216

この人は、身体を使った躍動感のある演奏が持ち味である。響きは高音の抜けがよく、きらびやかだ。しかしながら、全体に表現が単調で、場面ごとに風景の変化が感じられない。しかし、その範囲では端整な演奏で、安定感には恵まれている。カデンツァは意外に積極的な演奏だが、その分、フレーズが詰まり、呼吸が浅くなっている点が勿体ない。まだ上積みがありそうで、できれば、もうすこし聴いてみたいコンテスタントである。

【No.29 齋藤 吟思 日本】

曲目:協奏曲第3番 K.216

斎藤の演奏は、音コンのときに生で聴いたことがある。そのときの演奏の印象はすこぶる悪かったが、そのときと比べて、多少の成長は窺われる。しかし、表現の肉厚さも感じられず、内面的な充実も図られていない。相変わらず、「巧く弾くこと」に価値を置いているように思えてならないが、それすら自信たっぷりではないようだ。あらゆるパーツが不徹底で、イライラする。結局のところ、自分の見えないコンテストタントに成功はあり得ないということだろう。

【No.10 飯村 真理 日本】

曲目:協奏曲第3番 K.216

このコンテスタントは、かなりレヴェルが高い。フレージングやボウイングにも繊細な配慮がみられ、これまでのコンテスタントのなかでは、演奏全体から窺われる立体感が図抜けているが、そのために、オーケストラの響きまでもが立ち上がって聴こえる。響きそのものは高音域から中音域はもちろんのこと、低音域に至るまで安定しており、確固とした「声」をもっていることも特筆される。楽器の表面がしっかりと客席の側を向いて、無駄な動きがないのも良いヴァイオリン奏者の特徴である。カデンツァのフレージングや、攻め方もセンスが良いが、その分、やや素っ気ない面もなくはない。

【No.07 エレノア・ダルモン フランス】

曲目:協奏曲第5番 K.219

この「トルコ風」協奏曲は意外に少なく、ここまでで2人目。しかし、この華やかなコンチェルトに相応しい優美な音楽性をもち、音色も垢抜けている。それらの特徴は、(K219)を演奏するのに、十分に見合っているといえそうだ。ただし、総じて音楽が走りすぎているほか、急に遅くなったり、テンポの揺れが激しく、恣意的な印象である。何ごとも個性を重んじるフランスの若者らしい演奏だが、どうであろうか、私としては神経質な感じに聴こえてしまう。カデンツァも、いじくりすぎだろう。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

ここまでのところ、飯村真理、永井公美子、ソフノフスキ、ヤン・ユンジョンが気に入った。明日は、2日目の演奏が公開される。

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コメント

詳細なご報告、ありがとうございます!
仙台に聴きに行かれているのですか?
すごいですね!

私はストリーミングで聴いているのですが、
やっぱりそれじゃ、きちんと評価しづらいです。

続けてご報告、お願いします!

sioさん、こんばんは。

残念ながら、私もストリーミングです。最初の行に、「映像配信がようやくスタートした」と書いたので、わかると思いました。誤解を招くような表現でしたら、ゴメンなさい。

確かに、きちんと評価はできないですよね。ホールのアコースティックとはまったく違うだろうし、一長一短があります。生で聴いたほうが、ヴァイオリンの「声」などはよくわかるだろうし、第一、ストリーミングでは音量などはわかりません。

今後も読んでいただけれるのであれば、その範囲で受け取ってください。

しかし、一方、現地よりも客観的に見られるし、あれっと思ったら、すぐに調べられるというのがいいですね。私の場合、生演奏だと総じて点数は甘くなります。

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