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2010年5月26日 (水)

仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第3日 & 結果

仙台国際音楽コンクールも、予選の全日程が終了した。既に結果は出ているが、それはそれとして、これまでのと同様に感想を書いてみたい。

【No.02 会田 莉凡 日本】

曲目:協奏曲第4番 K218

この人の名前は、リボンと読むのだろうか・・・。演奏は立ち上がりから肩に力が入り、響きがカサカサしている。徐々にリカヴァーするも、音色には深みがなく、音楽づくりも平板だ。歌い方にも一貫性がなく、出たトコ勝負といった感想を免れない。演奏姿勢自体は誠実で、例えば、カデンツァに入る前のクライマックスを構成する息の長いフレーズでは、その骨組みを成す対位法的な構造が丁寧に描き上げられて印象的ではあった。その分、カデンツァは真面目すぎて、面白みがない。

【No.08 福田 悠一郎 日本】

曲目:協奏曲第4番 K218

オーケストラと一緒に弾き始めるカタチでスタートしたが、そこで外してしまうのでは、ノッケから頼りない印象である。独奏部の最初は切れ味が過剰に鋭く、音色もツンケンしている。呼吸も浅く、音楽に落ち着きがない。そうしたシャープな音楽性がプラスに作用する場面もあるにはあるが、どちらかといえば、ときどき見せるリリックな音色を生かした表現を丁寧に組み立ててほしい。その点で、途中のハーモニクスに自然さがないなどの問題はあるものの、カデンツァの演奏は彼らしい特徴を醸し出している。

【No.11 乾 ノエ ギリシャ/日本】

曲目:協奏曲第5番 K219

この人の演奏は、独特の「声」に支えられている。細部はやや粗削りながらも、明確なカンタービレの意識に恵まれ、歌うような詩情が常に張りついている。音色も爽やかで、透き通った輝きを放つ。これほど多くのコンテスタントが出てくるなかで、このようなタイプは彼だけという点で特徴があるし、上のような特質はモーツァルトの音楽のもつ一面に照合されるものだろう。カデンツァからはモーツァルトらしい才気煥発さだけではなく、ハイドン的なユーモアも感じられ、興味ぶかい。やや先を急ぎするきらいはあるものの、全体的に聴きごたえのある演奏であった。

【No.37 ワン・ジアジー 中国】

曲目:協奏曲第4番 K218

非常に決然とした入りに驚かされ、一瞬、強い嫌悪感を感じさせたが、すぐに「いや、待て・・・」と注意を引きつけられる。この曲は「軍隊」というニックネームで呼ばれることもあるが、それはそれとして、こうしたスタイルがまったく的外れとはいえない鋭さをもっているという解釈も成立し得るようだ。実際、ワンの演奏にはときどき強引に聴こえる部分もあるものの、全体的には意外にきちっと嵌っている。強奏部分で若干、力みすぎるところがあり、例えばカデンツァなどにおいて、それが音楽の自然な流れを削ぐ部分もあるが、全体的には質のいい表現になっている。基本的なスキルは高く、音楽に安心感があることも付記しておきたい。

【No.14 ジュ・ヨンキョン 韓国】

曲目:協奏曲第4番 K218

この人も前のワンと同じようにかなり決然とした表現だが、彼女の演奏を聴くと、ワンの素晴らしさが確信できる。それぞれのエレメントがかなり雑で、丹念な磨き込みが不足している。特に、それが実感できるのは、中間のヤマを盛り上げていくときの息の長いフレーズで、ブツブツ切れるフレージングの貧弱さにおいてであろう。これはカデンツァでもハッキリ出るだろうと思っていたが、案の定であった。とにかく、音楽づくりの粗雑さが目立つヴァイオリン弾きである。

【No.16 クララ=ユミ・カン ドイツ/韓国】

曲目:協奏曲第4番 K218

かなり力が入っているようにも見えるが、そのわりに、タイトな音がギリギリ美しく響くという変わった個性の持ち主である。ハッキリ言って、音楽性はあまり好きではない。瑕も多いが、それはそれとして、あまり大きな伸びしろを感じないのである。では、それだけ完成されたヴァイオリニストなのかというと、そういう風に言うには躊躇いを感じる。ただし、音色は常に太陽のように明るく、フレッシュなカンタービレも悪くない。ときどきみせる強拍の強調も的確で、印象に残る。カデンツァはやや素っ気なく、さらっと通過しただけという感じであった。

【No.21 コウ・ウンエ 韓国】

曲目:協奏曲第3番 K216

非常に高い技術をもっている奏者であるが、その素晴らしさが聴き手の印象にあまり引っ掛からずに流れていくので、なんだか穴の開いたタイヤに空気を吹き込んでいるようなイメージが感じられ、勿体ない。常に低音の基音が音色に反映しており、リリック系の声づくりにもかかわらず、どこか重厚な響きがするのが特徴となっている。フレージングは丹念に構築されているが、それにもかかわらず、若干、舌足らずな印象を受ける。それはカデンツァにおいても象徴的で、パーツごとの美しさに対して、それらの関係がもうひとつ立体性を帯びてこないのが欠点であろう。

【No.26 長尾 春花 日本】

曲目:協奏曲第4番 K218

注目の長尾も、オーケストラと同時にスタートするカタチでスタート。レガートがやや強い演奏は私好みではないが、それにもかかわらず、よく考えられたフレージングや、思い入れの感じられるカンタービレの濃密さが窺われるために、十分に説得力のある演奏と感じられる。さすがに、前回5位の実績に見合ったパフォーマンスである。音色の清澄さも目立つし、聴き手をのせる弾力性のある響きや、躍動感のある音楽づくりは特筆できるだろう。クララ=ユミがみせたような強拍の強調もより作品の構造に沿ったものであり、効果的だ。カデンツァも表情がゆたかで、短いながらも随所に有意な引っ掛かりがあって、聴き手の注意を離さない。

4年前はまだ藝高生だった長尾だが、20歳になって音楽は確信に満ちあふれ、長足の進歩が感じられた予選の演奏であった。

【No.03 青谷 友香里 日本】

曲目:協奏曲第5番 K219

青谷も、独奏の入りは極端に遅い。長髪の美女を長まわしで撮り、スロー再生するような感じでたおやかだが、あまりにも甘ったるい。一方、急速な部分に入ると、最初の部分ほど丹念な磨きこみが窺われず、行き当たりばったりになる。カンタービレにまとわりつくコブシのようなものも蛇足に思われ、全体の印象を下品なものにしている。攻め方が単調で、表情が固定的なこともマイナスだ。カデンツァはあまりに芝居がかっていて、音楽の自然さを損なっている。高い技術も、使い方を知らなければモノにならないということの典型であろう。

【No.40 イン・チウジャン 台湾】

曲目:協奏曲第5番 K219

インも、オーケストラと同時にスタート。独奏の出だしのテンポは中庸でいいが、音程が悪い。 急速な部分でもアラが多く、あらゆる意味でセンスが良くない。自分の呼吸というものができていないし、そのようベースで、オーケストラと共演することはリスクが大きい。その破綻が、このような形で表れていると見るべきである。

【No.19 アンドレイ・バラーノフ ロシア】

曲目:協奏曲第5番

独奏の出だしの部分を聴いて、前回よりもずっと繊細な音楽になったことを窺わせるバラーノフ。急速楽区への展開も個性的で、その後の展開で大きな瑕も出たが、これはノン・ヴィブラート・ベースの難しさである。メリハリの利いた構造が有機的に連なり、筋の通った演奏スタイルを貫いている。このラウンドではイージー・ミスも多く、本領発揮には程遠いが、それでも彼らしい積極的な攻めの姿勢が窺われ、カンタービレも伸びやかで、モーツァルトがもつ激しさを表出している。カデンツァは独特のフォルムにもかかわらず、無理がなく、生き馬の目を抜くような驚きがある。しかし、あとのラウンドに進むとすれば、より一段の慎重さが求められることは言うまでもない。

【No.4 粟野 祐美子 日本】

曲目:協奏曲第4番 K218

このラウンドの大トリを飾る粟野だが、パフォーマンスは期待どおりではない。この作品の決然とした部分と、中庸な美しさのどちらを採るかが明確でなく、中途半端な演奏になっている。これに象徴されるように、彼女の演奏は八方美人で、バラーノフのような強い芯というものが感じられず、「よそゆき」なのである。音色自体はベースにおいて清澄な美しさをもち、素朴な低音のベースも効いている。カンタービレは遅れ気味で、積極性が欠けている。これはオケの演奏ではないので、歌手がアリアをうたうときのように、伴奏に対して思いきって先行したポジションを求めたい。

 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

3日目の感想は、以上である。この日の演奏では、長尾、バラーノフは別格としても、乾の演奏が印象に残った。

【セミ・ファイナリスト】

さて、セミ・ファイナリストは以下のとおりとなっている。

◎ from 1日目

 No.1 A.アガポワ (ロシア)
 No.6 チョ・ガヒョン (韓国)

◎ from 2日目

 No.27 C.オスマノフ (ロシア)
 No.18 キム・ボムソリ (韓国)
 No.30 G.シュミット (米国)
 No.19 キム・デミ (韓国)
 No.24 守屋 剛志 (日本)

◎ from 3日目

 No.11 乾 ノエ (ギリシャ/日本)
 No.37 ワン・ジアジー (中国)
 No.16 クララ=ユミ・カン (韓国)
 No.26 長尾 春花 (日本) 
 No.5 A.バラーノフ (ロシア)

以上の12人である。韓国が4と、最大勢力に変わった。第2勢力は3名が通過したロシア。日本は、ドイツ在住で、ギリシャ人の血も受ける乾を含めると、ロシアと同じ3名となる。あとは、中国と米国が1名ずつ。ロシアを除く欧州国籍のコンテスタントはいなくなった。

選考は非常にスムーズなものに感じられ、意外なのは、通過したほうでアガポワと守屋。落選組では、飯村、永井、岩田といった日本勢が中心となる。しかし、なんといっても第1楽章しか聴いていないわけで、例えば、あとで聴いてみたところでは、オスマノフやキム・デミは、第2楽章以降がいい演奏になっている。

全体のレヴェルは、中の上と判断する。全体的にならして良い演奏をしており、明らかに圏外な奏者というのは少ない。ルセヴ級の驚くべき才能こそ存在しないが、松山、バーエワ級の才能は発掘できるかもしれない。

勝手にグルーピングしてみると・・・

【第1シード】
G.シュミット、キム・デミ、長尾、A.バラーノフ

【第2シード】
C.オスマノフ、キム・ボムソリ、乾、ワン・ジアジー、チョ・ガヒョン

【第3シード】
A.アガポワ、守屋、クララ=ユミ・カン

もちろん、これらは予選の演奏による個人的な印象によるもので、これから十分に逆転可能だと思う。なお、セミ・ファイナルは、29日から3日間の日程でおこなわれることになっている。

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コメント

今日は、私は海外からこのコンク-ルを拝見しています。>ノエの知人です。

(日本はギリシャ在住の乾を含めると、ロシアと同じ3名となった。)

彼は、(母がギリシャ人)ベルギ-のブルッセルに生まれました。ブルッセル、パリ、ドイツのカ-ルスル-エで学び、ドイツ在住です。

ご指摘に感謝します。訂正しました。

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