2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第1日 5/23 | トップページ | 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第3日 & 結果 »

2010年5月25日 (火)

仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第2日

初日のレヴューに倣い、仙台国際音楽コンクール予選を第1楽章だけ聴いてレポートするというカタチで、コンペティションを見守りたい。

【No.27 チンギス・オスマノフ ロシア】

曲目:協奏曲第5番 K219

オケには快速ではじめさせながら、ソロの出だしでいきなり極端なブレーキを踏んで、ゆっくり演奏したあと、曲調が変わる部分で再び速くなるという展開をみせたオスマノフ。それ自体は珍しくもないが、音楽の継ぎ目に粗い断絶が聴かれるために作為的なものを感じさせ、残念ながら印象を悪くしている。そこに限らず、飛躍の大きい部分や、細かい刻みを繋いでいく箇所において、途中で音楽がぶつっと割れる部分があるのが、私としては大いに気になる。

音色は伸びやかで品があり、フレージングは素朴。高音の響きが窮屈で、安定しない欠点があるのが問題となるだろう。カデンツァはオケの響きが消えないうちに、フライング気味のスタートを気って驚かされるが、中身もフォルムが鋭すぎて現代音楽のように聴こえた。

【No.20 小玉 裕美 日本】

曲目:協奏曲第3番 K216

冒頭から、パワフルで重厚なヴァイオリンの音を見せつけるも、音程の不安定さがつきまとうため、どこかニセモノめいた音楽に聴こえてしまう。下げ弓への偏りが目立つせいか、音楽に閉塞感があり、自らのもつ持ち味に見合った音楽の広がりが出ていないのが残念である。そのことは、カデンツァでは悪い方向で強調されているが、弓の真ん中だけを小刻みに使うのはまあよしとしても、では、そうして得た余裕を生かして、どのような歌い方を試みるかというアイディアには欠けている。結果として、安全運転として見られかねないのではなかろうか。

【No.31 ブレンダン・シェア 米国】

曲目:協奏曲第5番 K219

独奏の立ち上がりは、強いレガートに基づくつるりとした響き。一瞬、美しいと思うのだが、あとが続かない。案の定、急速な部分に入ると呼吸が浅く、神経質な音楽のつくりである。これに象徴されるように、響きは常につくりものめいていて、もちろん、安定感はない。カンタービレも単調で、詩情が湧いてこようはずもない。なんでここにいるのかわからない、下手なヴァイオリニストであった。

【No.18 キム・ボムソリ 韓国】

曲目:協奏曲第5番 K219

出てきたときから、「コイツはやりそう!」というオーラが漂っていたボムソリだが、期待に違わぬ濃厚な出だしだった。独奏ヴァイオリンの序奏的な部分をゆっくりと弾き上げるのはオスマノフと同じ手だが、彼女のほうがずっと無理がない音楽だ。急速的な部分では経験のなさに基づく綻びが随所にみられるものの、素朴で、無邪気な感じの演奏は、ある意味でモーツァルトらしいものとも言える。完成度はまだ低いと思うが、その分、伸びしろが大きそうなので、予選を生き残れば楽しみな存在になるだろう。カデンツァもキュートな演奏で(20歳で、顔立ちがいいからそう言うのではない)、聴き手を味方にできる演奏者であるように思う。

【No.34 スターリン・トレント 米国】

曲目:協奏曲第5番 K219

この奏者も、同曲を弾いた前二者と同じように、独奏の始まるところで極端にペースを落とす。テンポを抑えるのは楽譜どおりだろうが、それがあまりに極端なのである。過去の実力ある演奏者のパフォーマンスを聴いても、そうした傾向はないわけではないが、それらと同一視するにはアイディアが甘いのは否めないところだろう。これならば、オーケストラの序奏をもうすこし遅くするか、逆に、独奏の序奏部分をもうすこし引き締めるほうがいい。遅くするにしても、ショパンのテンポ・ルバートにおける左手の保持のように、全体が間延びせず、かつ作為的に聴こえないようにするための何かが必要である。

とはいえ、その範囲においては、このトレントの音色がいちばん美しく、モノがちがう印象を与える。しかし、それでもつのは限られた小節数の間だけであって、やはり、これでは笑いを禁じ得ないものがある。急速な部分に入っても、光沢のある音色のコートがはげず、音楽の構成観もスムーズである。惜しいのは、低音域の鳴りの悪さだ。それを除けば、エレガントで、表情の変化も巧みに捉まえている。カデンツァは微妙な強弱と、表情変化を丹念に拾った。

良い奏者とは思うが、少しずつ何かが足りない印象が決して消えないのはどうしてなのだろう?

【No.13 岩田 ななえ 日本】

曲目:協奏曲第4番 K218

表情ゆたかにステージに出てきた岩田は、演奏中もそんなスタイルを通す。想像どおり、いいエンジンを積んでいるアーティストである。アクションに派手さはないが、演奏のダイナミックさは十分で、さりげなく、伸びやかな個性をアピールしている。それがよがりではなく、モーツァルトそのものの個性に見合っているのが面白い。音楽は澱みなく流れるが、単調でなく、表情(顔ではなく音楽の・・・)がコロコロと変わる面白い演奏になっていた。カデンツァもまろやかで、かつ、強い音楽に仕上がっており、聴きごたえがある。

【No.30 ジオラ・シュミット 米国】

曲目:協奏曲第5番 K219

この人は、完成度が高い。レガートにならない、ナチュラルなヴブラートで固めた柔らかい音色が、まずは持ち味となるだろう。演奏には余裕が感じられるが、その一方、響きに張りがあり、案の定、すこし外すと瑕が大きい。しかし、これはシュミットの限界ではなく、その音楽性の誠実さを示す証となるものだろう。繰りかえしから、やや遅れる部分が出たりして、安定感が落ちたが、それでも全体的な印象は損なわれず、音楽の据わりがいい。ラウンドが進めば大化けも期待できるだろう。ただし、カデンツァはやや考えすぎた感じも窺えた。

【No.19 キム・デミ 韓国】

曲目:協奏曲第5番 K219

キム・デミの演奏は実に丁寧であるのに、それに見合う実直な響きが効果的に聴こえてこないのが不思議であった。音程はサスペンド(宙吊り)気味で、私にはすこし引っ掛かる。音楽の構成も単調で、工夫がない。いちばん気に入らないのは、内面に対する掘り込みがきわめて浅く、技術偏重になっていることである。カデンツァも陰影のある音色に見合う内面の掘り下げが甘く、表面的なものに思えてしまったのでは頂けない。

【No.15 上敷領 藍子 日本】

曲目:協奏曲第3番 K216

この人は他のコンテスタントと比べて音色が硬く、安っぽい響きに聴こえた。ホールのアコースティックを使えているようにも思えないし、楽器の鳴りが悪いのか、緊張しすぎているのだろう。フレージング等はオーソドックスで、大きな問題はないが、技術的な面での不足が常に足を引っ張る。ときどき見せる高音の爽やかな響きや、低音の深みのある響きを生かしたい。そのためには、中音域の響きに、より多彩なニュアンスを包含できる弾力性が必要なのではなかろうか。

【No.17 カン・スヨン 豪国/韓国】

曲目:協奏曲第4番 K218

理想的な脱力が印象的なヴァイオリニストで、冒頭からオケと一緒に弾き始めるが、その間は、まるで「口パク」(ここでは弾いているフリ)でもしているような見かけである。そのスタイルから来る極端に響きを削った演奏は、実に独特である。技術的には間違いなく高いものをもっている人だが、審査委員からの評価の好悪は極端に分かれそうだ。

それ以外にも、音楽のフレージングなどはやや後付けの印象を拭えず、強引なものにも思える。極端なことをいえば、モーツァルトなのに、ロマン派の曲にも聴こえるのだ。確かにヴィブラートを削ると、音が伸びないので、自然とテンポは早めにならざるを得ない。とはいえ、それを補うテクニックはあるのにもかかわらず、カンの頭のなかでは「ここはヴィブラートをかけない→早めに音楽を運ぶべき」という決めつけがあるのではなかろうか。カデンツァもあっという間に通りすぎる感じで、アイディアに欠けている。

【No.24 守屋 剛志 日本】

曲目:協奏曲第5番 K219

トリは日本の守屋だったが、思ったよりもずっとしっかりした弾き手である。独奏の序奏部分の音色の清らかさなどは、あっと言わせるものだ。しかし、非常に細かいことだが、音楽のつなぎの部分で、いかにも恣意的な減衰や、テンポの僅かな揺らしがみられ、ほんの僅かなのに、演奏の自然さを不思議なほど大きく損なっているのに気づいた。その後の急速な楽句は安定性が高いが、これといったヒラメキがなく、ソリストというよりはオケマンとしての資質が高いように思われる。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

初日は(K216)の演奏比率が高く、どうしたことだろうと思ったが、この日は(K219)の演奏に偏っていた。この日の演奏では、キム・ボンソリ、トレント、岩田ななえ、シュミットの演奏が印象ぶかい。

« 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第1日 5/23 | トップページ | 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第3日 & 結果 »

クラシック・トピックス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/543421/48451643

この記事へのトラックバック一覧です: 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第2日:

« 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第1日 5/23 | トップページ | 仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 第3日 & 結果 »

ツイッター

  • ツイッター

最近のコメント