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2010年11月28日 (日)

日本のオーケストラの2011ー2012シーズン 展望(4月期初グループを中心に) ②

さて、前回の記事に引きつづき、4月期初で来季シーズンがオープンした3つの楽団を、個別に検討していくことにする。

【東響】

東響はここのところ、ハイドン、シューベルト、シューマン、アフター・シューマンと年間テーマを継いできたが、来季はついにシェーンベルクに辿り着く。シェーンベルクの作品はとても美しい作品が多いのだが、イメージ的には12音の難解な作曲家ということになっていて人気がないため、これには楽団内で相当に慎重な意見があったはずだが、押しきられてしまったのであろう。2006年には『グレの歌』を上演しているし、ヤナーチェク・シリーズもつづけてきた東響のことだから、実際はもうすこし積極的だったかもしれないが。

いま書いたように、『グレの歌』はやったばかりなので、目玉としては、歌劇『期待』と、交響詩『ペレアスとメリザンド』、それに『浄められた夜』が置かれている。そのほか、楽団正指揮者の大友直人や客演のジョナサン・ノット(アンサンブル・アンテルコンタンポランを率いた経験もある)、それにノイホルトが協力して室内交響曲2曲、さらにピアノ協奏曲(独奏:小菅優)、ブラームスのピアノ四重奏曲の編曲版、バッハの『前奏曲とフーガ』(BWV552)の編曲版が取り上げられる。

シェーンベルクならば、『月に憑かれたピエロ』なんてのもいいのだが、そこまでは手が及ばなかったようだ。シェーンベルク以外では、それに近接する時代のストラヴィンスキー、ラヴェル、ドビュッシー、ショスタコーヴィチ、スクリャービン、それにルトスワフスキなどが脇を固め、新しい時代へ注ぎ込む河口付近に広がる音楽たちを俯瞰する内容となっている。

シェーンベルクの演目に対しては、モーツァルト、ベートーベンなどの古典派の曲目を中心に、ロマン派なども入れてバランスをとっている。

〈指揮者体制〉

指揮者体制は、スダーンを中心に、大友、飯森範親、秋山和慶がタッグを組む体制は、今年も変わらない。いちばんの中心であるサントリー定期を例にとれば、それぞれ4:2:1:1という登場回数になっている。このなかで注目に値するのはやはり秋山で、2012年3月定期で、スクリャービンの交響曲第4番『法悦の詩』を取り上げる公演だろう。スダーンの公演では、2011年7月の定期で、ライナー・キュッヒルがソリストとしてだけではなく、コンマスとしてもアンサンブルに加わるというから楽しみだ。モーツァルトだけなのか、『浄められた夜』でもコンマスを務めるのかわからないが、後者だとすれば、これは貴重な機会となろう。

折角の首席客演指揮者、ニコラ・ルイゾッティはギャラの問題もあるのか、コンスタントに呼べていない状況で、来季も定期への出演はない。東京オペラシティ・シリーズでベートーベンの4番とプロコフィエフの「古典」シンフォニーを指揮するが、これは人気の出ないオペラシティ・シリーズのてこ入れの意味もあるのだろう。

〈繰り返しの客演指揮者〉

客演は、新国でのピットをはじめ、何度も呼ばれているシュテファン・アントン・レックが、ミューザ川崎での「名曲全集」に顔を出している。マーラーの交響曲第5番がメイン。再登場組は、ほかにクシシュトフ・ウルバンスキがいる。ウルバンスキは今季のオペラシティからの繰り上がりで、評判が良かったのだろう。クリストフ・アーバンスキという英語読みが(あるいは、ドイツ人と勘違いしていたのでは?)、母国のポーランド語読みになっている。

〈初登場の指揮者〉

初登場は、ジョナサン・ノット、ギュンター・ノイホルト、オーギュスタン・デュメイ。それに、ベートーベンとモーツァルトを弾き振りするミシェル・ダルベルトだ。いずれも知名度の高い指揮者で占められており、録音も数多い。ノットはもともと現代音楽に定評があったが、バンベルク響で古典ものやマーラーなどへの評価も高めた。今回は、ラヴェルのバレエ音楽『ダフニスとクロエ』の全曲演奏がメインで、これは面白そうだ。

ノイホルトは①の記事でも書いたように、典型的なカペル・タイプの指揮者で、読響の『第九』では素晴らしいパフォーマンスを見せた。『ペトルーシュカ』といえば、一昨季、ミッコ・フランクが本番を直前に急遽キャンセルして、飯森範親が本番だけを代演した演奏会が素晴らしかったが、近年、弦管のバランスが非常に優れている東響では鉄板の演目だけに、ノイホルトの統率力だけではなく、個性が問われるところだろう。

デュメイは関フィルを相手に傑出した手腕を魅せ、ダルベルトの指揮ぶりはわからないが、もちろん、ピアニストとしては既に世界的な名声を得ている。これらの指揮者は「名曲全集」での登場であり、東響のうまい指揮者の配置が目を惹くところだ。

〈意外に豪華なソリスト陣〉

ソリストは若手中心だが、指揮を兼務するダルベルトやデュメイ、客演コンマスを兼ねたキュッヒルのほか、クラリネットのポール・メイエ、ヴァイオリンのクリスティアン・テツラフ、ピアニストの舘野泉、ヴァイオリンのセルゲイ・ハチャトゥリアン、同じくシュロモ・ミンツ、ピアニストのマルティン・シュタットフェルト、諏訪内晶子など、意外に豪華なメンバーなのに驚く。

そのなかでも、注目なのは2011年12月定期の舘野泉だろう。先のノイホルトと共演し、ラヴェルの左手コンチェルトを弾くというが、舘野はこの年になって本当に感動的な響きを出すようになっており、国内オーケストラ定演への登場も意外に珍しいだけに、これは聴き逃せない企画となりそうだ。

〈芸劇シリーズは終了〉

なお、大友直人プロデュースにより、エルガーのオラトリオやヴォーン・ウィリアムズの交響曲群、シベリウスの交響曲など、幅広くクリティカルな企画をつづけてきた東京芸術劇場のシリーズが、同ホールの改修を機になくなってしまったのは残念である。

【読響】

読響はカンブルラン体制の2年目を迎えるが、今季、『ペレアスとメリザンド』を中心に置いたプログラム構成が、来季はシェークスピアの『ロミジュリ』中心に変わる。「愛と悲劇」が内包するエネルギーを、様々な視座でみつめていくことになるそうだ。といっても、この楽団の場合、客演の指揮者とはテーマの共有がおこなわれないため、そのテーマは主にカンブルランの回に限定されてしまうだろう。

〈カンブルランと下野〉

ただし、正指揮者の下野との対話は感じられ、例えば、カンブルランが外国で披露することになっている『第九』+シェーンベルク『ワルソーの生き残り』というプログラムは、かつて下野がブログでいつかやってみたいと話していたプログラムなのだ。カンブルランが下野の影響を受けたのかどうかは定かではないが、ちょっと書いておきたい事実である。来シーズンのプログラムでは、下野のシリーズとカンブルランのテーマが連結するプログラムが見られる。

例えば、下野のヒンデミット・シリーズで、朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された「さまよえるオランダ人」序曲というパロディ作品を演奏するや(弦楽四重奏による曲を下野自らが編曲)、カンブルランは本物の『オランダ人』序曲を演奏する。下野のドヴォルザーク・シリーズに対して、カンブルランはモーツァルトの「プラハ」シンフォニーやスメタナ、ヤナーチェクのプログラムを置いて対応する。偶然かどうか、そのプログラムの翌月にはマーツァルが呼ばれている手のこみようである。そのほか、下野が読響で3度目の『第九』を指揮するのに対して、カンブルランは交響曲第7番で応じている公演もある。

カンブルランはやたらマニアックな、この若い知恵袋のことが気に入ったのかもしれない。

〈保守的な指揮者のチョイス〉

来季の読響は、大体において共演を重ねた指揮者が無難に配置されている。前首席指揮者のスクロヴァチェフスキ、オスモ・ヴァンスカ、パオロ・カリニャーニ、上岡敏之。シナイスキー、エルツ、秋山和慶も近年客演し、再度招集された形。エルツなんて(光藍社の公演で来ていたぐらいだし、)ゲテモノにちがいないと思っていたが、わりに評判芳しかったのやもしれない。

このなかで注目されるのは、もちろんスクロヴァチェフスキであるが、なんといっても、ショスタコーヴィチの交響曲第1番とブルックナーの交響曲第3番による公演が目玉となるだろう。また、ヴァンスカは前回の客演でなかなか好意的に受け取られたカレヴィ・アホの作品を取り上げる。

カリニャーニの前回の登場は、私にとって不本意なものだったが、今回、モーツァルト『レクイエム』を取り上げる公演は期待を集める。フランクフルト歌劇場のGMDとして、劇場のステイタスを高めた彼だけに、アンナ・サムイル、ダニエラ・ピーニ、ディミトリー・コルチャック、アンドレア・コンチェッティと、キャストも揃えてきた。コーラスは、『第九』でも年々、読響と共演を重ね、ベルリオーズの劇的交響曲『ロミオとジュリエット』でも起用される新国立劇場合唱団で、高いポテンシャルを誇る彼らの宗教曲を聴ける機会も貴重となる。

〈ソリストは驚きが少ない〉

どちらかといえば、この楽団はソリストよりも指揮者のほうにリソースを傾けたようだ。ソリストのなかで、もっともステイタスが高いのは、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストで知られるのロジェ・ムラロだろう。アルベニスの『イベリア』組曲や、メシアンの録音で知られている。

ピアノ、弦楽器、管楽器のソリスト陣が抑えめなわりに、声楽のソリストには有名どころもいる。例えば、ベルリオーズの劇的交響曲『ロミオとジュリエット』でソプラノ独唱に選ばれたベアトリス・ウリア=モンゾンは美貌のソプラノとして知られ、世界じゅうで主役級を歌っている。日本にも、カルメン役で来日したことがあるが、当時よりも成長がみられるようだ。これよりも声望が高いと思われるのが、ワーグナー歌手としても知られるドラマティック・ソプラノのキルステン・ブランク。ドイツを中心に、やはり主役級で活躍している。こちらは、マーラーの交響曲第4番終楽章のソリストとして。

新日本フィルのオペラ・コンチェルタンテ『サロメ』にも出演したアンナ=カタリーナ・ベーンケも、一線級の歌手だ。こちらはリヒャルト・シュトラウス『4つの最後の歌』をがっつり歌う。ブランクもベーンケも上岡の公演で呼ばれることになっており、彼自身がドイツで見極めた歌手を連れてきたのであろうと思われる。

【都響】

都響は、インバル体制が4シーズン目に入るのだろうか。契約は2013年までの長期にわたっているが、非常に人気も高く、その勢いにも衰えがないので適切な人選だったのだろうと思う。そんな中、さほどインバルの音楽を評価していない私は、別に自分が行かずとも人気があることだし、なるべく無視してきたわけだが、そろそろ聴いてみるのもいいだろうと思っているところだ。

ただし、前二者の楽団とはちがい、都響は1年の活動に骨組みをもたせるようなロジックは導入していないのが、やや不満なところだ。

良くも悪くもプリンシパルでもつ都響は、どうしてもインバルの動きを中心に見ざるを得ない。大曲専門のインバルだけに、ブルックナーの交響曲第2番、ショスタコーヴィチの交響曲第4番、第12番「1917年」、マーラー『大地の歌』など、派手なプログラムが並ぶことになる。いままでイメージじゃなかったが、インバルはショスタコーヴィチの交響曲全集を録音しているようだし、これまでの都響との演奏も評価が高いようだから、このあたりが狙い目だろう。

レジデント・コンダクターの小泉和裕が、リストの『ファウスト』シンフォニーを演奏することは、①の記事でも述べた。なお、このときにリストの協奏曲で共演するマルクス・グローは、若いがしっかりしたドイツ音楽を奏でられるピアニストなので、あわせて注目したい。グローの録音は、Avieレーベルにリストやブラームスのものがある(ブラームスが特にいい)。ドイツ音楽の権威、ハンス・ライグラフの愛弟子であり、30代そこそこの年齢にして、師匠の後任としてハノーファー音大の教授に迎えられている。

新たに首席客演指揮者となったヤクブ・フルシャだが、定期や通常シリーズの登場はなく、「都響スペシャル」1回の登場に止まった。来月予定のヤナーチェク『グラゴール・ミサ』につづき、フルシャが取り上げるのはドヴォルザークの『スターバト・マテル』だ。

〈お馴染みの客演指揮者陣〉

客演は、再登場が多い。モーシェ・アツモンは都響のオールド・ファンには昔懐かしかろう、かつての首席指揮者。それを別としても、ハンヌ・リントゥ、ジョセフ・ウォルフ、マーティン・ブラビンス、イラン・ヴォルコフ、ヴォルフガング・ボージチなど、何らかの形で都響と共演済みになっている。これらのうち、ボージチが注目であることは既に述べた。

また、その他の指揮者でも、アラン・ブリバエフは今季の東響の公演に出演。コンスタンティン・トリンクスは新国で東京フィルを指揮し、同フィルの定期にも登場した。大野和士、下野竜也は言うに及ばず、コバケン門下の山田和樹も日本フィルなど国内オーケストラを次々に指揮している。

指揮で珍しいのは、ファゴット奏者として有名なミラン・トゥルコヴィッチの登場。10年ほど前から指揮活動をスタートしているとプロフィールに書いてあるが、それは知らなかった。ファゴットの曲も入るが、独奏は同団の岡本首席に任せる。

〈目玉は特別演奏会に〉

目玉はやはり特別演奏会で、NYPのシェフに収まったアラン・ギルバートの客演となる。ソリストになんとフランク=ペーター・ツィンマーマンを迎え、彼の得意なベルクのヴァイオリン協奏曲を指揮するのだから楽しみだ。ただ、この組み合わせはN響で聴いたことがある(2007年)。

〈ソリスト陣〉

ソリストは、ヴァイオリンのジュリアン・ラクリンの登場以外で、先のグローを除くと、さしてインパクトのある人は見あたらない。ラクリンはインバルがショスタコーヴィチの12番を指揮する回で、同じショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を弾く。来シーズンのメンバーを俯瞰すると、リゲティで登場の技巧派ピアニスト・岡田博美や、リムスキー=コルサコフのコンチェルトに登場するピアニスト・小川典子の登場も楽しみに思える。

マーラーで共演を重ねるアルトのイリス・フェルミリオンはインバルの信頼厚く、これまでの登場でも概ね好評価だ。

〈室内楽トークコンサート〉

新機軸では、室内楽トークコンサートがある。第1回は、メンデルスゾーンのオクテットが取り上げられる予定だが、編成がいろいろに変わり、通り一遍ではないプログラムが組まれることになりそうだ。楽団主催の団員による室内楽有料公演は、やはり新日本フィルが始めた企画。楽団員にとっては大変だろうが、オケの活動にも好影響を与えるだろうし、収入面にもつながる。前向きな姿勢で、頑張ってくれるだろう。

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