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2011年5月29日 (日)

ヴィオラスペース2011 コンサートⅢ ヴィオラ・ヴィオラ・ヴィオラ 5/29 ①

さて、このコンサートをもって、今年のヴィオラスペースも閉幕である。国内外にいる主要なヴィオリストがあらかた集まったコンサートで、ヴィオラスペースの20周年を豪勢に祝った。

まずは、ストラヴィンスキーの『悲歌』を読響のソロ首席、鈴木康浩が演奏した。ベルリン・フィルのアンダー組織で腕を磨いただけあって、ノーブルな音色に、鋭いフォルムを穿った格調高い演奏。1944年、戦災を逃れての米国で、著名な弦楽四重奏団のメンバーからの依頼により、亡くなったクァルテットのリーダーを追悼する曲を書いた。この曲が演奏されるのも、やはり、私たちに周知の国民的不幸があったことと無関係ではあるまい。鈴木のヴィオラは上記の特徴に加え、他人と比べて粘りづよい響きがするのが特筆に値する。その粘りけが、この悲歌のカンタービレを自然と凝縮させるような演奏であった。

次は、シューマンの『幻想小曲集』を、東響首席の青木篤子が演奏した。青木の演奏は、先日のミニ・コンサートで聴いた井上祐子の演奏にちかい。まだそのレヴェルに達してはいないが、素朴で癖のない歌いくちは爽やかで、気もちがよい。この歌いくちを厳しくコントロールしながら、井上のような個性にまで高めていければ申し分ないと思う。

つづくブラームスのヴィオラ三重奏曲は、原曲がクラリネット三重奏曲のほうではなく、ホルン協奏曲(op.40)からの編曲であり、異例なことに、チェロ・パートをヴィオラに代えての演奏である。ヴィオラは都響首席の鈴木学で、ヴァイオリンはマーロフが担当した。マーロフは今回のイベントで八面六臂の活躍だが、このトリオでは若干、彫りの甘さがみられた。鈴木は優しく紳士的な音色が持ち味だが、室内楽においては経験が足りないのかもしれない。

そこで多分、この曲をもっとも愛していたのは、伴奏の野平であろう。構造が緻密で、その骨組みをできるだけ厚く描きだすことで味の出るブラームスでは、彼の執拗なピアニズムはぴったりくるのだ。作曲家としても少なからず影響を受けていそうだし、この楽譜は隅々まで知り尽くしているかのようである。フィナーレなどでは、イマイチ反応の悪い弦2人に対して、勿体ないほど強烈なダイナモぶりだった。それは無論、野平の暴走ではない。

つづいては、クレンゲルの『12本のチェロのための賛歌』をト長調からイ長調に移し、ヴィオラ八重奏としたものを演奏した。この作品はもともとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のチェリストが、当時の名指揮者、アルトゥール・ニキシュの65歳の誕生日を祝うために作曲されたものだという。楽団の12人のチェリストが、それを記念に演奏するという趣向であった。そして、その作品は完成の2年後、ニキシュの追悼のためにも演奏されたらしい。また、この作品はニキシュとはやはり深い関係にあったベルリン・フィルにも伝えられ、現在につづく「ベルリン・フィルの12人のチェリストたち」誕生のきっかけにもなった。

聴いてみると、なるほどお祝いにもお悔みにも相応しい、ほんのりと蔭を伴いながらも優しい作品で、老ニキシュも喜んだのではなかろうか。鈴木学率いる紀尾井シンフォニエッタ東京に参加する6人のヴィオリストたちに、ジェンセン・ラム、エンシク・チェの2人が加わっての演奏だが、気心も知れたメンバー同士だけに凝縮したアンサンブルで、作品の良さがハッキリ伝わった。

このクリンゲル(ユリウス)は、優れたチェロ奏者にして作曲家、そして、歴史的な名教師でもある。その弟子には、グレゴール・ピアティゴルスキ、エマニュエル・フォイアマンといった歴史的な存在がおり、わが国の音楽史にとっては欠かせない存在でもある斎藤秀雄大先生の師匠でもある人物と来ている。20周年を迎えるヴィオラスペースにとって、またとない素材だったというわけだ。この作品以外に、作曲家としても魅力的なものを書いているので、いずれ紹介する日が来るだろうと思う。

 (②につづく)

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コメント

 三たび失礼いたします。

 今回、聴いていて自分もかく弾きたいと強く(痛切に)思った演奏が井上さんと青木さんでした。やはりスタイルが似ているのでしょうか。何がどうなのか分かりませんが語彙が貧困な私は「カッコいい」としか言えません。

井上さん、青木さん、私もカッコいいと思いました。要するに、その言葉を使わないで、どう表現できるかということに挑戦しました。当面、仰るような表現で十分だと思います。井上さんの演奏はなかなか聴けませんが、ご存じのように、青木さんの演奏は東響の演奏会で聴くことができます。ヴェーラ四重奏団での、ご活躍もあります。

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