2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ

« スダーン(指揮)&キュッヒル(コンマス) シェーンベルク 浄められた夜 東京交響楽団 サントリー定期 7/16 | トップページ | 些事に騒いで復興が早まる? 松本大臣へのバッシングは正しかったのか »

2011年7月19日 (火)

斜陽と戦う精鋭たちがみせた奇跡 なでしこジャパン優勝の衝撃!

サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝で、日本中が大騒ぎになった月曜日であった。多くの人たちに交じって、私も記事を書いてみたい。しかし、本当のことを言うなら、今大会、私はこの代表にあまり期待をかけていなかった。確かに、昨年はアジア大会で優勝している。ただ、ここのところ、中国、北朝鮮といった女子アジアの強豪国は力を落としており、その結果を鵜呑みにするわけにはいかなかった。直前のテストマッチでもいまひとつの内容だったことから、こんな結果が待ち受けているとは予想だにしなかったところである。

【斜陽のなでしこリーグ】

北京オリンピックでは、完全アウェー戦で地元・中国を下して4強入りしたのが、このチームの頂点とみられていた。彼女たちは地元のメダル候補を下したため、失望した中国人から圧倒的な罵声を浴びながら試合を戦い、その図太い精神力には称賛が集まった。北京オリンピックでは、あの中国戦以降、他の競技にもわたって、それまでは影を潜めていた反日風がつよく吹き荒れた。しかし、そのことはその後の日本代表のいくべき荒波を、ほんの僅かに投映するにすぎなかったのである。

女子サッカー唯一の有名人で、男子における「キング・カズ」のようなカリスマ的存在でもある澤穂希も当時、既に30代に入っていたし、ディフェンスの要でチームの精神的支柱だったDFの池田浩美も引退、日本のゴール・マウスを長く守ってきたGKの山郷のぞみは未だ現役選手であるものの、残念ながら、選手としては斜陽の時期を迎えていた。日本女子代表は、これらのタレントが築いてきた財産をどのように継承するか、少しずつ答えを見つけていく必要に迫られていたのだ。

国内リーグに目を向けても、決して明るい材料はない。日テレベレーザとともに、リーグのトップ・チームのひとつだったTASAKIペルーレは母体企業が撤退を決断、そのことが池田の引退の原因ともなったように、リーグは明らかに衰勢である。リーグ優勝のベレーザが、カップ戦では仙台の常盤木学園に敗れるなどしたように、リーグ・レヴェルも決して高くはない。代表といっても、プロとして活動している選手は僅かで、華々しい大金が動く男子の世界とは訳がちがうのである。

現在、リーグは神戸に本拠を置き、澤らが所属するINAC神戸レオネッサが全勝で、内容的にも圧倒的につよい状態だ。その母体企業は、不動産管理、情報通信、ホテル・外食事業、教育事業などを手掛けるアスコ・ホールディングスという企業である。そのほか、リーグ所属クラブのほぼ半数はJリーグ所属クラブの傘下にあり、上位2チームは企業が母体、ほかは高校の運動部から再編されて発展したような地域のサッカー・クラブ組織である。そして、東京電力もチームをもっていたのだが、この度の大事故により、サッカー・チームの運営も難しくなったというわけである。代表のうち、左サイドのディフェンダーとして活躍した鮫島彩は、このチームに所属しており、海外への移籍を余儀なくされた。

代表クラスで、リーグでプレーする選手もほかに生業をもっている場合がほとんどである。象徴的には、日本代表に長く所属するFW、荒川恵理子(怪我のため、今回のチームには不参加)はサッカーだけでは食っていけず、スーパーのレジ打ちのパートをしていることでよく知られている。

そのことは世界じゅうを見回しても、そう大きくは変わらないだろう。私の知る限りで、一応、プロとしてのリーグと呼び得るようなものがあるのは、アメリカとドイツだけである。これらのチームが優勝候補とされたのは、もちろん、偶然ではなかったのだ。国によってはリーグそのものがないこともあり、その点で、日本はまだ恵まれているほうともいえる。日本のトップ選手、FWの安藤梢、DFの鮫島彩などは、米・独でプレーし、澤や宮間あやも、米国のリーグでプレーしていた経験をもつ。

なでしこジャパン優勝の快挙は、確かにあらゆる意味で重要であり、感情的に喜ばしいことでもある。しかし、彼女たちの置かれている状況について、私たちは十分、よく知っておく必要があると思うのも、また事実だ。

【なでしこ戦士の境遇をどうすべきか】

彼女たちが一体、どのように遇されるべきなのかは判断に迷うところである。男子のJリーグでさえ、なかなかうまくはいかないというのに、女子部がいきなり大人気になるということはあり得ない。一時的な話題性は高く、オリンピックやワールドカップといった節目ごとに注目されるのは当然としても、では、我々の趣味に、女子サッカーの観戦という項目がすぐに増えるとは思えない。パワーやスピードという点で、もちろん男子にはかなわぬとしても、決勝の米国戦など、個人的には男子のワールドカップ決勝よりもずっと楽しめたし、それは単に我らが母国の晴れ舞台であるということばかりではなく、単純に内容の素晴らしさが伴っていたことによっている。

あれほど素晴らしい試合も見せられるのならば、もっとプロとして高い扱いをすべきではないかという考えにも一理はある。多くの選手たちは男子並みとは言わぬにしても、その優れた技能に見合った報酬・・・少なくともそれで生活が営めるという報酬レヴェルを望んでいるだろうし、そのことを目標に活動してきた面もあると思う。ただ、実際のリーグの姿を考えると、このスポーツはあくまでアマチュアリズムのなかで捉えられるべきだという考えも無理ではないはずだ。

もっともシンプルなスポーツ、陸上競技にしてもそうだが、ある時期から、スポーツとカネの問題は切り離せなくなった。頑張っている人を国が支援するという考えもわからなくはないし、そのことは十分、国民的な共感にも値することだろう。勝てば国威発揚に加え、対外的なアピール効果も大きく、安い宣伝費で大きな効果を得られると思えば、そこにはもっと資源を集中してもよいのかもしれない。第一、世界じゅうがそれをやっている現状では、日本だけが金をかけないという選択肢もあり得ないというものだ。

女子サッカーの歴史は意外に古いものの、やはり男子と比べれば、マイナー競技の範疇にあり、それだけに、本格的な強化の開始から10年程で日本が世界を制すという快挙も為し得たのであろう。しかし、陸上競技や水泳、ゴルフ、テニス・・・その他のわりに人気の高いスポーツでは、そう簡単にはいかない。世界のトップについていくためには、応分の投資が必要であることは理解できる。ただ、カネをかけなければ強くなれないというのも、よくよく考えれば、これまた不条理なことである。

スポーツもまた、芸術と同じく、それなりに国家的リソースを費やすべき分野であると、私は信じている。しかし、アプリオリに、カネをかけなければスポーツは衰退するという前提を置いてみることには、私はいつも違和感を覚えるのである。もちろん、サッカー女子代表の優れた選手たちに、何がしか報いたいという想いはあるのだが、一方、彼女たちが少しでも儲かるようにしてやれという考えは、いささか短絡的なように思えてならない。では、どうすればいいのだろう。この矛盾を解く良いアイディアはないものだろうか?

【難しい矛盾】

現在、日本のリーグで実際におこなわれ、アメリカのリーグでもおこなわれたことは、経営をコンパクトにし、男子リーグの活動とも組み合わせることである。一発逆転は、あり得ない。このようなことからコツコツとリーグを・・・チームを守っていくしかないのだし、ジャブジャブにカネをまくことは、この場合、かえって逆効果を生むこともある。選手たちの境遇は、さしあたって解決しないだろう。しかし、彼女たちの努力が高いレヴェルで保たれていけば、中長期的には少しずつ良くなっていくにちがいない。

幸い、日本のサッカー教育は、若い世代で非常に有効に機能している。今回の代表でも、ディフェンスを支えた20歳の熊谷紗希を筆頭に、守護神で、決勝でも大活躍した海堀あゆみ、今大会での出場は少なかったが、天才的なストライカーとして期待される岩渕真奈、北京五輪のときにはバックアップ・メンバーでしかなかった左サイドの鮫島彩など、若い世代が確実にチームのボトム・アップに貢献した。熊谷、鮫島は女子高校サッカーの名門、常盤木学園の卒業生で、岩渕は日テレの下部組織で育てられた。海堀は、中盤の阪口らと同じく、高槻の下部組織の出身である。こうした資源を効率的に守っていくことで、コストをかけず、高いレヴェルを維持するという難しい課題もクリアできるように思われる。

【早すぎる成功の代価】

しかしながら、あまりにも早く極めた頂点は、女子サッカーの発展をかえって難しくしたとも考えられる。次の大きな目標はロンドン・オリンピックということになるが、もちろん、ここで女子代表には金メダルの期待がかけられるであろう。ただ、実際にはアメリカとの決勝をみるにつけても、日本は決して、どこからみても最強のチームだったわけではない。強いチームが、そのまま勝つとは限らないのがサッカーなのだ。私はもちろん、日本の活躍を信じるものだが、今大会MVPの澤はいっそう年齢が上がって、能力を高く維持することは徐々に難しくなろう。そういう日本が、この大会に匹敵する成功を収めるのは簡単ではない。

例えば、ワールドカップ日韓大会で活躍した男子代表が、次のドイツ大会の失敗で大きな打撃を受けたように、女子代表もここからが正念場となるわけであり、その状況はもちろん、男子よりも厳しいのは前述のとおりだ。

【真の功労者 阪口に乾杯!】

とはいえ、いまはまだ、あの澤の奇跡的な同点ゴールを素直に味わっておくべきなのだろう。あのゴールは先の男子代表の戦ったアジア・カップ決勝で、李忠成が決めたノートラップ・ボレーと同じようにエポックなものだった。それは単に澤ひとりの手柄というよりも、チーム全体の想いが詰まったゴールであり、逆にいえば、そのような想いを形にした澤の精神力の素晴らしさは称賛されて然るべきだ。ただ、このゴールがいま述べたような意味で重要なものだったとするならば、彼女とコンビを組んだもうひとりのボランチこそ、真のヒロインなのではなかろうか?

その選手は、阪口夢穂(みずほ)だ。はじめ所属したチームから離脱して新しいチームに移り、その後、移籍したTASAKIペルーレも廃部となって、外国にも渡った経験をもつのだが、新天地では2試合目で大きな故障をして成功には至らなかったという苦労人である。しかし、その能力は澤らもはっきり認めるところであり、澤と彼女は男子代表の長谷部と遠藤のような、掛け替えのないパートナーなのである。このチームでいちばん技術が高いのは宮間、いちばんハートがつよいのは澤、そして、もっとも働きものの選手が阪口だといえるだろう。

真の功労者である阪口のために、乾杯しよう!

« スダーン(指揮)&キュッヒル(コンマス) シェーンベルク 浄められた夜 東京交響楽団 サントリー定期 7/16 | トップページ | 些事に騒いで復興が早まる? 松本大臣へのバッシングは正しかったのか »

その他記事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/543421/52247742

この記事へのトラックバック一覧です: 斜陽と戦う精鋭たちがみせた奇跡 なでしこジャパン優勝の衝撃!:

« スダーン(指揮)&キュッヒル(コンマス) シェーンベルク 浄められた夜 東京交響楽団 サントリー定期 7/16 | トップページ | 些事に騒いで復興が早まる? 松本大臣へのバッシングは正しかったのか »

ツイッター

  • ツイッター

最近のコメント