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2011年8月 4日 (木)

第1回定期演奏会 「ヒロシマへの讃歌」

アリスの音楽館では、ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)を利用し、疑似的な演奏会をつくって公開していくことにした。NML上で私のつくったプレイリストを公開し、興味があれば、ほかの方も一緒に楽しんでいただけるようにしている。ただし、NMLへの加入が必要だ(15分間は無料体験できるが)。今後、私は2週間に1度ほど、こうしたリストを定期的に公開し、「定期演奏会」のようにするつもりでいる。酔狂だ!

定期演奏会では毎回、何らかのテーマを設定し、それに見合った作品を厳選する。第1回は8月4日の公開ということで、翌々日に迫る原爆祈念の日に合わせて、「ヒロシマへの讃歌」をテーマとした。ただ、アダムズの『ドクター・アトミック』やペンデレツキの作品、大木正夫の「ヒロシマ」シンフォニー、シュニトケのオラトリオ『長崎』など、原爆や広島・長崎を直接、テーマにした作品も数多くあるものの、それらのものを並べただけでは、あまりにも単純すぎて話にならないと考えた。テーマはテーマとして、そこから自由な発想の翼をめぐらして、プログラムを組み上げた。

【プログラム】(→NMLページへ)
1、バッハ/ミトロプーロス 幻想曲とフーガ BWV542
 (L.スラットキン指揮BBC響)
2、R.シュトラウス メタモルフォーゼン
 (P.ルンデル指揮ポツダム・カンマーアカデミー)
3、ウェーベルン 夏風のなかで
 (M.ギーレン指揮バーデン・バーデン南西ドイツ放送響)
4、グリーグ オーゼの死~劇付随音楽『ペール・ギュント』
 (H.フロシャウアー指揮ケルン西ドイツ放送響)
5、ドヴォルザーク 序曲~歌劇『ルサルカ』
 (J.カイルベルト指揮シュターツカペレ・ドレスデン)
6、ヒンデミット 最後の場面~歌劇『世界の調和』
 (M.ヤノフスキ指揮ベルリン放送響)

記念すべき最初の定期演奏会の冒頭には、バッハが相応しいと思うのは月並みなことかもしれないが、まずはその月並みから始めることにした。バッハのなかにある「無」の要素を、ヒロシマとつきあわせようと当初は考えていたが、途中でミトロプーロス編の面白い録音を見つけ、次の曲に選んでいた『メタモルフォーゼン』とは相性もよいことから、こちらに差し替えてみた。

2曲目に、リヒャルト・シュトラウスの『メタモルフォーゼン』を置くことは、すぐに思いついた。私の好きな曲でもあるし、ドレスデンの焼け跡を目の前にシュトラウスが書いた作品は、ヒロシマと通じ合うところがあるからだ。こういう言い方が正しいかどうかはわからないが、結局、ドイツも日本も自業自得なのだ。しかし、だからといって、奪われた命や文化の重みに対する悔しさは我々のなかに生きる。彼らしく、うしろ向きのものではあれ、そのエネルギーがシュトラウスの作品の美しさのなかには滲んでいるが、今回の演奏会で私が追究したいのもそのような部分なのであった。

まったくの偶然ながら、いちばん気に入った録音が「ポツダム」・カンマーアカデミーのものだったのは皮肉である。ポツダム宣言を早期に受諾せず、戦争継続を図ったことで、広島・長崎は原爆に曝され、北方領土はソ連に奪われたのは周知のとおり。

実際の演奏会なら、休憩後ということになろうが、3曲目にウェーベルンの『夏風のなかに』を置いてみた。原爆は夏に落とされたので、なにか「夏」に関わる作品を入れることは早いうちから思いついていた。当初は前半2曲ともがドイツ音楽だったため、今度はフランス音楽に移って、オネゲルの『夏の挽歌』あたりを入れることを考えていたのだが、それでは音楽的な流れにスムーズさがないように感じられた。そこで私は、私の愛する音楽家のひとり、ウェーベルンに登場を願うことにした。この作品は作品番号さえ付されなかった遺作(生前に出版されなかった作品)であるが、ウェーベルンの作品としては異例なほど構えが大きく、歴史的に偉大な指揮者がしばしば好んで取り上げてきた作品だ。

4曲目は、グリーグの『ペール・ギュント』にある「オーゼの死」である。この作品では、日本の古謡『さくらさくら』の旋律と似たようなメロディが現れるため、「西洋のなかでの日本」というテーマを想起させることができるように思われた。また、このあたりで、メロディアスな作品が恋しくなってきたこともある。それよりもなによりも、グリーグもまた、私にとっては愛着の深い作曲家だということが大きかった。フロシャウアーの全曲版演奏から、格調高い演奏でお届けする。

5曲目には理屈は抜きにして、とにかく美しい作品を置きたかったのである。そして、そこにスメタナかドヴォルザークあたりの作品を当て嵌めることは、すぐに思いついたことだ。結局、私のもっとも好きな作品のひとつ、『ルサルカ』の序曲をもってくることで落ち着いた。

最後は、ヒンデミットである。『世界の調和』は歴史的な天文学者、ヨハンネス・ケプラーの生涯をオペラにしたものだが、そのスケールの大きな哲学はバッハのそれにも比肩する。ケプラーの死の床に集った仲間たちとともに、「世界の調和」に思いを馳せるケプラーの想いは、実のところ、世界の調和=平和を願うヒンデミットの想いと、ハーモニーの調和とラインのシンプルな美しさに徹したその音楽観に、2つながら通じている。ヒンデミット最後のオペラのフィナーレを、私も手もとに置いているWERGOレーベルの名録音でお届けすることで、演奏会を壮大に締め括ろうと思う!

なお、3-6曲目は1つのまとまりとして聴き得る格好になっている。これは工夫というよりは、半ば偶然の産物である。

次回は、2週間後に再びお目見えするつもりだ。テーマは、「音楽といのち」(予定)である。

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