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2011年10月 2日 (日)

井田勝大 メンデルスゾーン 交響曲第3番 シアターオーケストラトーキョー 特別演奏会 9/30

熊川哲也を看板とするインディペンデント系のバレエ・カンパニーであるKバレエ・カンパニーには以前から興味をもっていたが、音楽と舞踊の関係性においてバレエをみる私にとって、プロオケではない伴奏への不安感というものは拭いがたかった。今回、そのオケ=シアターオーケストラトーキョー(TOT←絵文字じゃないです!)単体の公演があり、内容的にも面白そうなので足を運んでみた。

オケは見るからに若い奏者が多く、発展途上であることは否めないだろう。日本のバレエ・カンパニーとしては、熊川のところは公演数が多いと思うが、それでもオケのほうは発足から数年しか経っていない。まだまだプロオケと称せるようなレヴェルではない。弦の厚みや、管楽器の響きの質、それに、アンサンブル全体としてのアタッキングに物足りなさがあり、いちばん良くないのは、良い部分とそうでない部分の差が激しいこと。この演奏会でも、前半の演奏だけを問題にすれば、「スカ」だったと思わざるを得ない。

この日は、実は、Kバレエでも公演があった。委嘱曲まで含む意欲的なプログラムだから、多分、もともと特別演奏会が予定されていて、そこへKバレエの公演が被ってきたのだろうが、オケとバレエ団のあいだで日程のすり合わせはなかったのだろうか。そういうマネジメントの面でも、稚拙さを感じる。

しかし、後半のメンデルスゾーンはオケの面白さというのがよく出ていたので、ひとまず、オケの力量に関しては安心した。理想的なメンデルスゾーンの演奏かと問えば、それには大いに疑問のあるところだろう。それでも、バレエをメイン・フィールドに活躍しているオーケストラとしてみると、演奏スタイルの独特さに味わいが見出せる。メンデルスゾーンの演奏がチャイコフスキー的になっていたというような見方をすれば、実も蓋もないスタイルの混乱にちがいないが、私はそこに、このオーケストラにしかない味わいを見出していた。

特に、第2楽章と第4楽章は印象ぶかい。

白眉となるスケルッツォの第2楽章は、弦と管楽器、それにティンパニのバランスがよく嵌っており、旋律の浮き上がりがナチュラルで、かつ、彫りがふかい。特に、細かい音符が弾力的に積み重なり、集団舞踊のステップを思わせる華やかなイメージが適度な重みを伴って、立体的に立ち上がる点は、さすがに踊りをよく知るオケだという感想になった。

そのなかでも惜しいのは、あまりにも旋律的な部分へのアプローチが親密であるために、メンデルスゾーンらしい対位法の構造を示すべき部分での踏ん張りが甘く、全体の構造がドヴォルザークの初期シンフォニーのような軽いメッセージに落ちついていることだ。これは、微妙なはなしである。ドヴォルザークだって、対位法的な手法を上手に使って、舞曲楽章を組み立てている。しかし、私のイメージでは同じ「動的」な感じでも、メンデルスゾーンの場合はそれほど舞踊的ではなく、むしろ舞台音楽的なのだ。フランス・バロック(・オペラ)的と言ってもよい。それが独特の気品につながり、ロマン派のなかでも、古典派的な趣もつよいというメンデルスゾーンの特徴を捉えることにつながる。

とはいっても、私のイメージのなかで鳴り響く音楽とはちがうものであるとはいえ、TOTが自分たちの良さや特徴をハッキリと示すという点で考えれば、これぐらいの逸脱はあって然るべきものだと思う。むしろ、こうした逸脱がもっと徹底的になされていたら・・・前半のバッハなどでもそれがなされていたとしたら、今回よりはずっと面白い演奏会になっただろうと想像するのだ。彼らの演奏を聴いていると、私はまるで、自分が当時の舞踏会の真ん中に立たされたような気もちになる。こういう演奏は、なかなか聴けるものではない。

第4楽章は、アレグロ・ヴィヴァティッシモ(速く、この上もない優美さで)という指示であるが、そのような気品を漂わせるには、上記のような欠点もあり、必ずしも相応しくない。だが、低音弦のほうから第1ヴァイオリンのほうに響きが滑りあがり、それを第1ヴァイオリンが優美に跳ね返すという構造的所作を粘りづよく試み、旋律に柔らかく乗りながら、少しずつ高揚していく演奏は、なかなかアグレッシヴに聴こえる。ここまで、もうすこしだけ主張してもいいと思われた低音弦が徐々にポジションを高め、全体的なテンションも最高潮に達した。

問題は、こういうところに入ってくると、どうしてもベートーベン的になってしまうことだ。メンデルスゾーンという作曲家はとても魅力的だが、その分、そのフォルムをメンデルスゾーンらしく保つには、相当の我慢が必要ということだろう。これは熟練したプロでも、そう簡単ではないことだ。もしも、最後の主題が現れるときに、その優美なサウンドが唐突なものに聴こえないなら、この我慢が効いたということになる。TOTの演奏は、そこがすこしばかりいけない。コーダの前は、かなりテンポを落とし、バレエ・オーケストラのもうひとつの特徴である待ちの要素を感じさせるが、それもいま一息だ。

ただし、コーダの演奏は若さが爆発して、とても感動的な演奏になっていた。シベリウスやチャイコフスキーを思わせるようなサウンドの熱さはご愛嬌として、やはり、そのような部分にもバレエ的な味わいを感じることができたのは面白い。伸びやかな金管の響きは特に印象的だが、この下支えとなる弦の動きにもうひと踏ん張りがあると、この響きがさらに天にちかづいていくのだが。それでも全体がよく支えあい、ゆたかなフォルムで最後まで弾ききった。

メンデルスゾーンの3番は、私にとって、とても親密な曲である。このような場合には点が辛くなりがちだが、TOTによる演奏は、その楽曲がもつ味わいを損なうことなく、自分たちらしさを追求したメッセージ性にも満ち溢れている。まだまだ若い団員たち。貪欲に自分たちを磨いて、舞台芸術というフィールドにおいては、プロオケをも呑み込むような個性を発揮できるようになってほしいところだ。井田勝大という指揮者はその点において、彼らによくあっている指導者だが、ときには、より経験豊富な厳しい指揮者(福田一雄もいいが)にも指導を仰ぐことも必要かもしれない。それが、オーケストラの成長には不可欠な「旅」というものだ。「犬も歩けば棒に当たる」の精神では、なかなか上には行けないものである。

【プログラム】 2011年9月30日
 1、バッハ ブランデンブルク協奏曲第5番
  (vn:キャサリン・キャッシュ fl:鈴木 千代 pf:藤原 亜美)
 2、小野貴史 ダブ・マルティテュード~2群のオーケストラのための
 3、メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」

 コンサートマスター:キャサリン・キャッシュ

 於:杉並公会堂(大ホール)

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