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2011年11月13日 (日)

4月期初 在京オーケストラの来季展望

現在、在京のオーケストラは4月期初の楽団と、9月期初の楽団が相半ばするようになってきた。後者は新シーズンの前期日程を消化している段階だが、4月期初の楽団は争うように来季プログラムを発表しはじめている。いつも遅めの発表となる東京フィルを別にして、読響、都響、東響、東京シティフィルの発表をみながら、各楽団の来季を展望したい。

【宮本体制に変わるTCPO】
この4楽団のうち、東京シティフィル(TCPO)は長く楽団を指導した常任指揮者の飯守泰次郎が桂冠名誉指揮者に棚上げされ、知名度の高い元オーボエ奏者、宮本文昭が新設のトップ・ポスト=芸術監督に就任することになった。いちどの共演も経ずして就任を決めた楽団の姿勢には疑問もあるが、宮本の就任によって・・・

①独自の人脈によるトップ・アーティストの招聘
②木管部門の表現力の向上
③個人的知名度による活動の活発化

などが期待でき、抜群の「聴く力」や、アンサンブルに対するフレキシブルな発想をもった宮本の役割は、まったく理解できないというものでもない。セミ・ステージ形式によるワーグナー上演などで話題をつくり、コツコツとアンサンブルを育て上げてきた飯守との路線的なちがいはあれ、新シーズンのプログラムを見るかぎり、飯守も引きつづき楽団に関わっていく形になっており、在京オーケストラのなかでも存在感の薄いTCPOを上向かせるためには、必要な選択だったと思われるのである。

【手堅い邦人重鎮指揮者中心のラインナップ】
宮本監督にとって最初のシーズンは、宮本、飯守、矢崎彦太郎の役付きのほか、手堅い日本人指揮者がズラリと顔を並べる。尾高忠明、秋山和慶、広上淳一、佐渡裕、下野竜也と、各世代のトップが次々にバトンを継いでいく。ソリストも知名度の高い人が中心に選抜され、小山実稚恵、高木綾子、吉野直子、宮田大、森麻季、幸田浩子、半田美和子などが顔を揃えた。一方、フルートのペーター・ルーカス=グラーフや、指揮者のアラン・ギルバートの妹で、優れたヴァイオリン奏者であるジェニファー、パリ管の副コンマスの席にある千々岩英一といった実力派のゲストも呼ばれ、コントラストに満ちている。

曲目はシーズンを通しての統一感はあまり見られず、各指揮者の得意なものを集めた感じになっている。例えば、下野竜也はベルクの『ルル』組曲を中心に、シェーンベルクをダブル・メインに据え、ハイドン&モーツァルトの交響曲28番でつなぐという彼らしい凝った選曲になっている。だが、そのなかで、やはり目を惹くのは尾高指揮によるエルガーだろう。交響曲第1番はどこで振っても安定した味わいを引き出し、協奏曲で共演するチェリストの宮田大も、私が若手の演奏家のなかでは突出して信頼する逸材である。室内楽的な素養の高い彼が、エルガー・メダル保持者のタクトのもと、シンフォニックなエルガーの協奏曲をどのように弾きこなすかには興味がある。

宮本監督はメインの定期演奏会で3回、ティアラこうとう定期で2度の出演であり、より重い職名がついたにもかかわらず、実質的には今シーズンの飯守とさほど変わらないか、多少、少なめの登場回数に止まっている。その代わり、なにか別の権限が与えられたのかどうかは定かでない。定期の3回のうち、いちばん最後の回で、千々岩との共演によるシベリウスの協奏曲、それにショスタコーヴィチの交響曲第5番を演奏するというプログラムが、宮本の指揮者としての当面の価値を推し量る試金石ということになるだろう。

よっぽど、その前に今季、来月に予定される定期でプロコフィエフや『第九』を演奏することで、その実力は事前に試されることになるようだが・・・。

【読響は手堅いラインナップ】
その他の3楽団は、それぞれカンブルラン、インバル、スダーンの安定政権のなかで、順調な音楽的成果を上げている。カンブルランの時代に入り、完売公演が増えるなどマネジメント面で一定の進捗がみられる読響だが、来シーズンは既に楽団で実績を挙げている相性の良い指揮者がラインナップされた。カンブルラン、下野のほか、歴代のトップ、アルブレヒト、スクロヴァチェフスキを筆頭に、フリューベック・デ・ブルゴス、セゲルスタム、尾高、カリニャーニ、ライナー・ホーネックなど、登場する指揮者はみな出演を重ねているメンバーだ。ほかでは、大野和士、大友直人、小林研一郎などの指揮者も、値うちが定まっている。ウィーンのレオポルド・ハーガー・クラスの先輩で、下野とも縁のある篠崎靖男のみは初登場かもしれない。

来シーズンの読響はフランス音楽を中心に、なんとなく響きの煌びやかさに傾斜したプログラムが組まれており、突っ込みどころも多くなっている。

【多彩なカンブルラン定期 など】
まず、創立50周年を記念する10月27日の定期では、カンブルランとはヘンスラー・レーベルの録音でもお馴染みのハンス・ツェンダーへの委嘱曲の世界初演が予定されている。細川俊夫『ヒロシマ~声なき声』が合わされ、新聞社母体のオーケストラらしくジャーナリスティックな意味でも注目公演となりそうだ。だが、それだけではないのである。例えば、これまでにアルブレヒト、スクロヴァチェフスキ、下野と歴代の楽団トップが振ってきた『第九』にいよいよ彼が挑むのは、ある意味、正念場である。カンブルランの演奏会では、ラヴェルのバレエ音楽『マ・メール・ロワ』と『ダフニスとクロエ』の両曲全曲演奏もあり、こちらも大注目の公演となる。

パートナーの下野は、H.K.グル―バーの『フランケンシュタイン!!』(ダブル・エクスクラメーションはもともと曲名についているようだ)なんていう変わったプログラムを選んだり、コリリャーノの『レッド・ヴァイオリン』とか、クラシックとそうでないものの境界線あたり(それが意味あるものなのかどうかも含めて)をドライヴする意図だろうか。

また、日生劇場でのオペラ公演を意識してか、定期でアリベルト・ライマンの作品を取り上げる運びにもなっている(リンクはシューベルトへのオマージュ作品)。これがシューマンへのオマージュ作品で、メインがシューマンのヴァイオリン協奏曲と交響曲第2番という組み合わせだから、いつもながら念入りのプログラム構成である。ヒンデミット・シリーズはいったん切れたが、ドヴォルザークはエリシュカの振りそうもない2番が舞台にかけられ、盟友、ブラームスのヴァイオリン協奏曲と合わされる楽しみなプログラムも用意された。ヴァイオリン独奏のクリストフ・バラーティは筆者と同じ1979年生まれだからというわけではないが、私好みのきっちりしたタイプで楽しみだ。

【スクロヴァチェフスキ~ワーグナーを振る など】
前常任指揮者のスクロヴァチェフスキも、読響ではじめてワーグナーを振る。しかも、『トリスタン』。オランダの作曲家、デ・フリーヘルによる1時間前後の編曲版はもともと、同国の名匠、エド・デ・ワールト率いるオランダ放送響のために書かれたものと思われ、日本では、アルミンクが『リング』の編曲版を披露している。自作品の日本初演と、ドイツ歌劇の原点、ウェーバーの『魔弾の射手』序曲を組み合わせ、大注目の公演だ。スクロヴァチェフスキは劇場経験はあまりないコンサート指揮者だが、むしろ、そうした指揮者ならではの独特の視点にこそ期待が集まる(本来はそういうのに期待はできないが、経験豊富なスクロヴァチェフスキならではのことである)。

フリューベック・デ・ブルゴスも、自作『ブラームス・ファンファーレ』を、ブラームスの『悲歌』『運命の女神の歌』『運命の歌』と衝き合せる面白い試み。メインにもベートーベンの「運命」が並び、徹底的に「定め」というものと向き合っていくアタマを使うプログラムを用意した。

新しく特別客演指揮者というポストに迎えられた小林研一郎だが、来季は1プログラム2公演のみと、それほど存在感は際立っていない。

【都響に小森輝彦が登場! など】
インバル体制の定着した都響も、特にシーズンを通しての統一感はない。初登場は少なく、既に値うちのある程度、定まった指揮者が保守的に選ばれている。人気のあるインバル定期にあまり関心を示さない私だが、来季の9月定期には瞠目した。ドイツ宮廷歌手、小森輝彦が起用され、マーラーの『さすらう若人の歌』を歌ったあと、その素材が組み込まれた交響曲第1番を演奏するというプログラムなのである。小森は私が定期的に聴いてきたバリトン歌手で、実力は正に「折り紙つき」だが、『第九』やザルツブルクで初演を務めたヘンツェのプログラムを除いて、これまで在京オーケストラでの出演はあまりなかった。「宮廷歌手」の称号が、多少は役に立ったのであろうか。

経済的なものの影響もあるのか、都響もまた、国内の資源をうまく使おうとするような起用が目立つ。インバルとフルーシャを除き、外国から呼ばれる指揮者はアンドリュー・リットンとイオン・マリン、それにユージーン・ツィガーンの3人のみだ。ソリストも6人だけと、邦人アーティスト、特に楽団内資源へのシフトが目立つ。典型的には、店村をソリストに立てたベルリオーズ『イタリアのハロルド』などである。レパートリーをあまり広げない小林としては、『ハロルド』はあまりやらない演目であるが、どういう演奏になるのであろうか?

このほか、矢部達哉、山本修、佐藤路世がソリストに起用されている。

【注目の5月定期 など】
注目は、5月定期に登場する2人のソリストとしておく。イオン・マリンとシューマンのチェロ協奏曲を共演するのは、プレスラーとのベートーベン・ツィクルスも記憶に新しいアントニオ・メネセスだ。前プロにワーグナーの歌劇『リエンツィ』序曲、メインにフランクの交響曲と、前後のプログラムも充実している。B定期は楽団のレジデント・コンダクターを務める小泉和裕が指揮するが、これと共演してブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏するのが、アンドレア・ルケシーニだ。ルケシーニの日本デヴューは東響で、スダーンとの共演によるベートーベン。若いが、とても深い音色をもつドッシリしたピアニスムはいまでも印象に残っている「体験」だ。

そのほか、それほどパンチ力を感じないプログラム構成だが、下野竜也が振る一柳慧とケージのバリバリ「前衛音楽」の組み合わせは条件が許せば聴いてみたい感じがする。一柳というのは青年期は、海の向こうから一生懸命に新しい音楽を運んでくるインポーターとして、とかく閉じこもりがちな日本の楽壇を引っ張ってきた人である。

【マーラーのリーダーに取り組む東響】
東響は本拠地、ミューザ川崎の閉鎖で危機的な状況を迎えている。今季のシェーンベルクに代わり、来季はマーラーのリーダー(歌曲)がテーマ化され、これは奇しくも都響のマーラー・ツィクルスとバッティングする。日本の楽団は集客に失敗できないときは、困ったときの「マーラー頼み」ということになるのであろうか。しかし、シンフォニーではなく、リーダーに焦点を合わせているだけに、歌手のラインナップに注目が集まるようにうまくできたプログラムだ。リーダーそのものが交響曲になっている『大地の歌』を除き、すべてのシリーズを通して、マーラーの交響曲は1曲も演奏しないというのが面白い。

リーダーの独唱者たちは劇場人、スダーンの知見も入れながら選んだ精鋭たちである。世界最高のコントラルトであるナタリー・シュトゥッツマン、いかつく深いバリトンの声質をもつロマン・トレーケル、リート歌いとして声望高いヴォルフガング・ホルツマイアなどの手堅いメンバーに加えて、トーマス・バウアークリスティアーネ・エルツェ、ビルギット・レンメルトなど、実力者が揃う。ロディオン・ポゴソフも、レヴァインが始めたMETの世界的に有名なプログラムで育成された期待の若手である。

私がいちばん注目するプログラムはまだずっと先だが、来年の12月定期、エルツェによる『角笛』抜粋と、ブルックナーの難曲、交響曲第6番をスダーンが指揮するプログラムだ。エルツェは先のリンクから聴ける録音でもわかるように、マーラーのリーダーには適性が高いように思われる。それとともにブルックナーのなかでも一癖あるプログラムを、曲者・スダーンの指揮で聴くのは予想のできない可能性を秘めているのではなかろうか。

【工夫のみられるオペラシティ定期 など】
集客の厳しいオペラシティ定期には今季も工夫がみられたが、来季もいろいろな仕掛けがみられる。いちばん大きいのは、千住明によるオペラ『万葉集』のフル・コンサート・オーケストラ版初演という機会だろう。そのほか、ネマニャ・ラドゥロヴィッチによる弾き振りの演奏会が企画されるなど、聴きどころに工夫が凝らされているようだ。

シナイスキー、ウィグルスワース、ラーンキなど、私にとってはノー・サンキューな顔ぶれもみられるものの、ゾルタン・コチシュの指揮による『マクベス』(R.シュトラウス)など、予想のつかないプログラムが面白みを感じさせる。そして、最終の3月23日の定期では、秋山和慶がマーラーのカンタータ『嘆きの歌』を指揮する。今季の新日本フィルでアルミンクも指揮する曲目だが、こちらは1998年に秋山自身が初演したオリジナルのエディションによるものということである。もちろん、これは震災への想いが詰まったものになるのだろう。

仙台フィルとともに、震災からの直接的な影響が大きかった楽団として、東響の歩みには注目が集まるのである。

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