第22回芥川作曲賞 選考演奏会 2対1の採決で新井健歩が受賞
【搦め手の音楽が評価された!】
搦め手を突くことで、勝利を誇った英雄は意外と少なくない。例えば、前漢の高祖(劉邦)は、敵の少ない間道を選んで、正面突破の項羽を出し抜いてしまった。今回の芥川作曲賞は、正に搦め手を選んだ新井健歩の受賞となる(『鬩ぎ合う先に』)。この作曲家のスケール感のなさは、最後に照明を消すという愚かな発想によっても決定的である。サウンドは単に煩く、高橋裕も指摘するように、様々な技法的工夫にもかかわらず、響きの特徴はきわめて保守的であるように聴こえた。若々しく、この時期しか書けないサウンドの鮮やかさはあり、その筆力は他の候補と比べても見劣りするものではなく、むしろ勝っている。しかしながら、彼の音楽がもつ特徴やその主張に対して、彼の音楽が真っ向から向き合っていないのは明らかであり、あくまで「搦め手」の表現がつづいた。
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