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2014年1月 5日 (日)

2013 コンサート・ベスト10! 【セレクション】

第1位 尾高忠明指揮東京フィル シェーンベルク グレの歌

第2位 アンサンブル・ノマド 近藤譲の音楽

第3位 オペラ「絨毯座」 モーツァルト 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』

第4位 二期会 オッフェンバック 歌劇『ホフマン物語』(粟國淳演出)

第5位 ラザレフ指揮日本フィル マーラー 交響曲第9番

第6位 サロネン指揮フィルハーモニア管 バレエ音楽『春の祭典』

第7位 タカーチQ バルトーク 4番/ブラームス 2番

第8位 キタエンコ指揮東響 ラフマニノフ 交響曲第2番

第9位 クァルテット・エクセルシオ 東京定期(7月)

第10位 日生劇場 ライマン 歌劇『リア』

いつものことだが、ランクづけは至極、便宜的なものだ。この10個のコンサート、あるいは、ここから僅差で漏れたいくつかの公演、例えば、北とぴあ国際音楽祭の『フィガロの結婚』や堤剛&ブッフビンダーの公演、ブリュッヘン&18世紀オーケストラの公演などは、そこにしかない独特の価値を示しており、他の公演との比較は無意味である。

ノミネートのところで書いたように、「一歩前へ」というキーワードにこだわって10の公演を選んでみた。エリシュカの公演は私にとって別格なので、敢えて外した。LFJ(公演数が多い)やヴィオラスペース(楽器に対する思い入れが特別すぎる)も別ものなので外すことにした。

このなかで、第1位をとった公演は2011年、東日本大震災の影響で中止せねばならなかった公演の仕切りなおしということで、演奏者の側にも特別の感情がこもっていた。それに加えて、念願の役柄だったという山鳩を歌った加納悦子の絶唱は、墓場のなかまで持っていこかなくてはならない。この公演を起点に、第4位の『ホフマン物語』も選ばれたわけだ。山鳩役の加納と、トーヴェ役の佐々木典子が、それぞれニクラウスとジュリエッタというキーパーソンで出演した公演であった。プラッソンの選んだ版ではニクラウスの出番が少なく、割を食うことになるが、粟國演出はそれを逆手にとって、ニクラウスの役割を決定的に神聖なものとした。むしろ、古いスタイルの公演ではあるが、それが時には上演をリフレッシュする作用があることを証明した公演でもある。

2位のアンサンブル・ノマドの公演はランク・インすることが多いが、そのなかでも、昨年の公演は特別な意味合いをもっていただろう。演奏された作曲家、近藤譲は60代のベテランであるが、主宰の佐藤紀雄らがチョイスしたのは2000年以降の近作であり、それでも、若手の作曲家と比べてもはるかに自由なアイディアを、フレッシュに使いこなしているのが衝撃的であった。いま、日本で最高の作曲家は近藤として間違いない。

3位の公演は小規模カンパニーによる、圧倒的な成功である。オケもなく、ピアノによる伴奏ではあるが、不足する要素は何もない。エルヴィラ役を女装した男声歌手と、侍女の2役に分け、笑いとアイロニカルな表現効果を同時に実現したのも見事だ。公演レヴューの最後に、私はこのように書いている。「会場と舞台の上に、距離がなかった」。これと比べれば、通常のオペラ公演はより大きな予算を使いながら、演出意図はスカスカである。

5位と8位にも、国内オーケストラの公演が入った。ラザレフの演奏したマーラーの交響曲第9番は、文句のない名演だった。8位キタエンコの公演は、前回の同じ指揮者の公演と比べて、オーケストラの対応力が飛躍的に高まっていることを如実に示す公演で、そのためにランク・インした。東響は私が会員であったことがもっとも長いオーケストラで、いまも特別の思い入れがあるが、個人的な順位づけゆえ、それも多少は加味されていることを否定はしない。

その点では、9位のクァルテット・エクセルシオの公演にも十分な思い入れはある。このクラスの室内楽アンサンブルが、日本で高い志を維持して活動しつづけてくれているのは、なんとしても嬉しいことだ。初めて聴いたとき、彼らの演奏には、まだ弱点も多かったが、最近は誰に薦めても恥ずかしくない演奏内容に変わってきた。成長するアーティストの存在は、私をもっとも喜ばせる。昨年の夏公演は、彼らが「一歩前へ」と意味ある進化を遂げようとしていることを証明した。

基本的に、伝統的に軽く見られがちな日本人による演奏を尊重している私だが、昨年のベスト10のなかには、例外的に、フィルハーモニア管の公演が入った。それは、サロネンとの新しいパートナシップによるものである。初演から100年を迎えるハルサイの演奏は、1年を通して、私にとって残りつづけた衝撃である。多分、ラトル&ベルリン・フィルを聴いても、その印象は決して覆らない。だが、単に現在の成果が素晴らしいというに止まらず、このコンビの将来は、さらに明るく輝いているように思われる。「一歩前へ」と彼らは、常に進みつづけていくはずだ。

タカーチQはベテランのアンサンブルだが、要のガボール・タカーチ・ナジーが抜けても、「一歩前へ」と進みつづけることを止めなかった。あれからウン十年、多分、いまのアンサンブルは創立時メンバーよりも、ブリリアントで優しい表現力を育てている。エクの良き先輩としても、彼らのパフォーマンスは是非、憶えてきたいものだ。なお、私はタカーチQ4人の関係について、このように評している。「彼らはみるからに良い関係をつくっており、お互いの特徴を生かしながらも、アンサンブルとして高度な結びつきを確立している。融合して1つのメッセージを伝えるのではなく、4つのメッセージがあたかも和音のように響いてくるのであった」。そんなアンサンブルは、世界的にみても数えるほどしかない。

第10位には、日生劇場で上演されたアリベルト・ライマンの『リア』を選んだ。昨年も近作の『メデア』が上演されて話題を呼んだが、現代の名品がようやく日本に紹介されたのである。昨年の上演の経験を踏まえて、すべての面で「一歩先へ」歩み出した公演であり、2つの公演を踏まえて、私たちの知見はより洗練されたものへと導かれた。作者が一万言を重ねたとしても、そこに真実があるとは限らない。ただ、私たちが体験することによって、少しだけ「一歩前へ」と歩み出すことが許される。

いずれにしても、そこには、人間のこころがあるはずだ。私が選んだ10の公演にはどれも、つよい志があり、それを実現するアイディアと具体的なプランがあった。優れた実践がその上に重なるが、これは二次的な要素だ。ランク外のものだが、北とぴあ国際音楽祭の『フィガロの結婚』を思い出してみようではないか。この公演ではなんと、キャストのひとりは声を出せない状態で、演技のみで参加していたのだ。そのような欠落にもかかわらず、何がしたいかが明確な公演は人々のこころを掴む。私が求めるのは、単に上手に演奏された公演、ミスなく完璧な公演、娯楽的に楽しい公演ではなく、すべての要素が幸福に融けあった公演なのである。

★部門賞

【コンダクター・オヴ・ザ・イヤー】
 ミシェル・プラッソン、ラドミル・エリシュカ

【新しい驚き】
 ・大宅 さおり pf
 ・白 建宇 pf
 ・マリー・カトリーヌ・ジロー pf
 ・加納 悦子 Ms
 ・スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団

【再び確認された驚き】
 ・ミハイル・プレトニョフ cond
 ・堤 剛 vc
 ・アントワン・タメスティ va

【ディスク・オヴ・ザ・イヤー】
 ・M.プレスラー ベートーベン/シューベルト/ショパン BIS-1999

【最悪の出来事】
 ・インバル指揮都響:交響曲第5番
  評言「インバルはいちばん強い者に、下の者がつき従えという方法で音楽を構築する」
 ・大阪市音楽団解散に向け、橋本市政で条例廃止案が可決
 ・世界中でオーケストラの破産・経済難、オケ・歌劇場の統廃合が進む

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