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オーケストラ

2018年8月 7日 (火)

マルク・ミンコフスキ(指揮) チャイコフスキー バレエ音楽『くるみ割り人形』 都響 フェスタサマーミューザ川崎 8/5

【クリスマス、ハツカネズミ、そして、復活】

チャイコフスキーの「三大バレエ」などというが、そもそもバレエ作品は3つしかない。そのなかで『くるみ割り人形』は最後に書かれたもので、亡くなる1年前(1892年)の作品である。全2作と比べて、すぐには当たらず、生前には、定番的なプロダクションもできなかった。その背景(クリスマスの時期の物語)から、日本でも年末の恒例行事として上演が定着しているが、反面、固定的なバレエ・ファン以外には、今更という演目ではなかろうか。

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2017年12月14日 (木)

デニス・ラッセル・デイヴィス プロコフィエフ 交響曲第6番 ほか 新日本フィル JADE #581 11/29

【フランス6人組とその時代】

デニス・ラッセル・デイヴィスが新日本フィルに初登場したが、なかなかの好相性であった。現在、楽団の体制は上岡で固まっているので、変更の余地は少ないが、可能性があれば、客演を重ねて関係を温めてほしいと願う。それにしても、珍しいプログラムが並んだ。演奏会を貫くキーワードは孤独と協働(他者、もしくは、過去の自分と)、未来への予言と抵抗、本当の愛国心、隠された楽器の役割と関係、2つの戦後と軋む社会、明朗な悲しみ、信仰と平和といったところであろう。これだけのことが、パッと思いつくほどの優れたメッセージに満ちたコンサートだったのである。

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2017年11月 2日 (木)

エリシュカ フェアウェル・ツアー vol.2 リムスキー・コルサコフ 交響組曲『シェヘラザード』 ほか 札響 604th定期 10/27、28

【概要】

皆が、彼の健康を気遣う気持ちがなかったら、もっと長い拍手がつづいたかもしれない。一秒でも長く一緒の空間にいたいオーディエンスの気持ちと、老体にあまり負担をかけてもいけないという心遣いが鬩ぎ合うなかで、最後にエリシュカが元気な姿を見せくれた。舞台袖から、楽員たちもそれを見守っている。フェアウェル公演は、最高の雰囲気のなかで幕を閉じた。ラドミル・エリシュカと札響による幸福な10年はおわるが、この間に楽団は大きな変貌を遂げた。過去に所属した主要な団員が、N響コンマス、読響首席奏者、その他のオーケストラの首席クラスに就任しているように、リソースは初めから充実していたのだが、エリシュカとともに札響の名前が世に轟くと、そのリソースが一挙に花開いた。パスティエルとアルトゥスという2つのレーベルから出された10年以上に及ぶ録音のアーカイヴはそのまま、2002年に経営危機が報じられた札響が復活し、花開くまでの歴史を記録したことにもなろう。

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2017年10月24日 (火)

エリシュカ フェアウェル・ツアー vol.1 ドヴォルザーク テ・デウム/交響曲第6番 ほか 大フィル 512nd 定期(初日) 10/19

【思いのほか、元気】

指揮者ラドミル・エリシュカと札響の組み合わせは多く聴いてきたが、大フィルとの組み合わせは初めてだった。そして、これが最後になるはずだ。医師から長旅を禁じられたというエリシュカの最後の日本ツアーが、大阪で幕を開ける。エリシュカとともに名声を高めたのは、なんといっても札響なのであるが、大フィルも1枚のディスクを発売し、それに次ぐ成果を挙げた。特筆すべきは、彼らがヤナーチェクの『グラゴール・ミサ』、ドヴォルザークの『スターバト・マーテル』、それに、この日は同じくドヴォルザークの『テ・デウム』を演奏して、大規模な合唱付きの宗教作品を取り上げ、札響でいくらか欠けているレパートリーの一環を穴埋めしたことだ。なお、札響では同じ『スターバト・マーテル』と、ベートーベンの『第九』が取り上げられた。北・西2つのオーケストラが車の両輪となって、エリシュカの日本での活動をサポートしたとみるのも間違いではあるまい。

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2017年10月16日 (月)

パーヴォ・ヤルヴィ バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 ほか N響 Cプロ 9/28

【息をするように新しさを醸し出す】

パーヴォ・ヤルヴィとN響のスクリャービンが素晴らしかったこともあり、券を買い足して、バルトークのコンサートにも足を運んだ。これはBプロのため、すべて会員で埋まるというシリーズだが、個人売買によって席を確保。チケットの高額転売に強く反対する私としては、定価以上にはならないオケピを用いた。2階席でさらにディスカウントする相手もいたが、この演目では1階席の、通路より前方を確保したい。それに相応しいものがあり、気持ちよく取引が成立した。実際、はじめてのサントリー定期を聴いてみると、N響がまるで海外のオーケストラのように響く。多分、リキを込めて演奏しないと響きが届かない渋谷のホールと比べると、肩の力を抜いて、8割ぐらいで弾けることで、本拠地とは異なるまろやかなサウンドを出すことができるのだ。

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2017年10月 7日 (土)

スクリャービン 交響曲第2番 ほか パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) N響/Cプログラム 9/22

【ヒエラルキーを打破する音楽】

パーヴォ・ヤルヴィの時代になって、N響がかなり良くなっている印象は実感していたものの、その本丸であるヤルヴィのコンサートには足を運んだことがなかった。従来、私はヤルヴィの手腕には疑問符をつけていて、得意な分野はあるものの、レパートリーによっては完成度にムラがあるという風に感じていた。ドイツ・カンマーフィル・ブレーメンとの相性はよく、私は横浜で彼の『フィデリオ』を聴いて、ある程度の満足を得たが、それでもファンになるほどではなかった。ヤルヴィはドイツ・カンマーフィルのほか、これまでにシンシナティ響、パリ管などのポストに就いて、実績を挙げており、とりわけ、ビシッとアンサンブルを整えるプロとしては筋金入りの実力との噂もある。しかし、N響でのプロジェクトは、彼にとってはこれまでにないものになる可能性がありそうだ。

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2017年6月28日 (水)

ダニエル・ブレンドゥルフ リムスキー・コルサコフ 交響組曲『シェヘラザード』 ほか 読響 名曲シリーズ 6/13

【3つのキー】

スウェーデン出身の指揮者ダニエル・ブレンドゥルフの、多彩なアイディアに驚かされた公演だ。1981年、ストックホルムに生まれた音楽家は、まずチェリストとして、トルレイフ・テデーンやハインリッヒ・シフの教えを受けて、立派に道を拓いていた。のちに指揮者に転向し、ヨルマ・パヌラの手解きを受けることになったという。そのせいか、指揮の動作などは先日、来日したサントゥ・マティアス・ロウヴァリとよく似て、からだ全体を駆使するものだった。驚くべきは、そのヴァリエーションゆたかな曲づくりのアイディアだ。メインのリムスキー・コルサコフの交響組曲『シェヘラザード』は、ロシア音楽の繰り返し(オスティナート)の伝統を反映して、似たような音素材が重ねられていくなかで構築される作品だ。その形式がシンフォニックな構造に寄り添っており、なおかつ、リムスキー・コルサコフ独特の多彩な管弦楽の歌わせ方と相互作用を引き起こして、今日、もっとも有名で、華やかと目される作品のひとつとなっている事情がよくわかった。

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2017年6月16日 (金)

ハインツ・ホリガー スカルダネッリ・ツィクルス コンポージアム2017 5/25

【ホリガーとスカルダネッリ】

ハインツ・ホリガーのライフワークともいうべき傑作『スカルダネッリ・ツィクルス』が、東京オペラシティの「コンポージアム2017」の企画として演奏された。「スカルダネッリ」というのは、精神に異常を来した詩人フリードリヒ・ヘルダーリンが用いた自署で、彼の異名である。ヘルダーリンは頭脳明晰で、神学と哲学を修め、鋭いポエジーを示す傑出した詩作品を多く発表していたが、生前、広く認められることはなかった。30代にして統合失調症を病んで、37歳から熱心な支持者であったE.F.ツィンマー家の塔に籠もりがちになり、ほとんど外界との接触を断ちつつ、73歳にして歿した。別に、自殺したわけではない。

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2017年6月 1日 (木)

フェドセーエフ チャイコフスキー 交響曲第4番 ほか N響 1861st定期 Cプログラム

【錆びついたエンジンも輝かしく再生】

N響の再構築は、2015年に首席指揮者となったパーヴォ・ヤルヴィによって急ピッチで進んでいるようだ。5月の公演は、ピンカス・スタインバーグとウラディーミル・フェドセーエフの指揮によるもので、熟達した彼らの統率力の凄さというのもあるのだろうが、それ以上にオーケストラのコンディションの良さが際立った。近年は実力ある若手・中堅の奏者を集めながらも、全体が活き活きと機能しないN響というイメージだったが、いちどは錆びついたエンジンも輝かしく再生を始めたのだ。アシュケナージやプレヴィンが悪かったというわけではないが、2003年にデュトワが退任したあとは、もう一手を欠いていた印象がある。デュトワは一口にいえば、N響を一挙に現代化した功績がある。オペラを含むプログラムの幅をワイドにし、アンサンブルの質という面でも、伝統的なドイツ的な堅固さを一部削っても、よりしなやかな表現力を手にできるようにした。ところが、彼が音楽監督を辞したあとは明確な方向感を打ち出せずに、あまりにも音楽の「民主主義」が進みすぎたように思われるのだ。

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2017年5月19日 (金)

ピンカス・スタインバーグ ベルリオーズ 幻想交響曲 ほか N響 オーチャード定期 5/7

【時代的矜持と良心の代表】

以前の来日が放送され、気になっていたピンカス・スタインバーグが、それから12年もの歳月を経て、再びN響の指揮台に立った。オーチャードホールは好きでなかったが、本拠地よりはマシであろうし、前半の独奏がアンヌ・ケフェレックということもあり、聴きに出かけた。メインの『幻想交響曲』も、生で聴くのは久しぶりだ。私の記憶に残っているのは、2006年のジョアン・ファレッタ(都響)による見事なパフォーマンスであり、スタインバーグの前回の来日と大差ない時期だ。私のなかではある程度、「解釈」が決まって、お蔵入りしていた演目ということになる。つまり、それを覆すに正当な根拠、発想力、イマジネイションを発することのできる演奏を選んで聴かなければ、意味がないことになる。さもなくば、私のなかにある音楽が改めて鳴らされるだけであり、目の前で鳴っている音は、ただのカラオケ音源にすぎなくなってしまうからだ。

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