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室内楽

2019年3月 5日 (火)

アンサンブル・ノマド バッハを越えて 「超える」vol.3 2/23

【総決算】

アンサンブル・ノマド、今回の定期公演は「バッハを越えて」というテーマで、様々な典礼作品、祈りの音楽が組み合わされたコラージュ的な演奏会がつくられたが、それは中心となるバッハの『ミサ曲ロ短調 BWV232』からの断章を含む25のパーツから組み上げられた、至極、複雑なものであった。キリスト教カトリックだけではなく、東方正教、ユダヤ教、イスラーム等にまつわる伝統的な音楽(もしくは音楽のようなもの)が集められた一方で、作・編曲はここ数年中というものも少なくなく、伝統的なものと、新しいものが自由に行き交う活気のある音楽の風景が描かれた。また、ジャンル的にも日常の祈りの呼びかけに用いられる経典の読誦から、ミサ曲のような典礼にまつわる音楽作品、ターン・テーブルや電子音を用いたノイズ・ミュージックによる即興的な演奏、ラッパーによる自由なパフォーマンス等を含めて、越境的なものとなり、レビューを組み立てるのも簡単ではなさそうだ。

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2018年12月21日 (金)

現代音楽コンクール 競楽XⅢ 白小路紗季が第1位 12/16

【競楽の概要】

1945年以降に書かれた独奏、もしくは、室内楽のための作品(クラシック音楽)で、そのパフォーマンス、演奏家としてのセルフ・プロデュース・スキルを競いあう現代音楽演奏コンクール『競楽XⅢ』を聴いた。私は’XⅠ’に初めて足を運び、素晴らしいイベントであることを確認してからは毎回、2年おきの開催に欠かさず足を運ぶようになった。今回も16日の本選会を聴いたが、本当に素晴らしい演奏者ばかりが並んで、腕比べというには勿体ない。あり得ないことだが、自分が審査に参加して同様に25点をつけることができるとしても、ほとんどの人は満点以外につけようがなく、採点には頭を抱えてしまうことだろう。誰が受賞したとしても不満はなく、その差はジュリー各々の価値観や趣味に基づくものでしかないといってもよい。

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2018年11月 2日 (金)

イザイ音楽祭ジャパン 東京公演 新発見『無伴奏ソナタ』ほか  出演者;フィッリップ・グラファン ほか 日本イザイ協会 10/20

【イザイ音楽祭】

ウージェーヌ・イザイは19世紀から20世紀にかけて最高のヴァイオリンの巨匠であり、優れた作曲家でもあった。特に、彼が6人の友人たちへと捧げた無伴奏ヴァイオリン・ソナタは、それぞれが大曲というわけではなく、むしろ、簡潔にひとつひとつのテーマを追った質素な作品たちであるが、それらのどれもが現代のヴァイオリニストにとっては最愛の、そして、必ずぶつからなくてはならない試練の作品となっている。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの6曲と同様、イザイの作品は特別に尊重されているのだ。最近、そのイザイの未知のソナタが発見されたというニュースが飛び交った。もっとも、そのソナタはいま述べた6曲のソナタに入るはずのものだったらしいが、バッハの前例に倣う形で調性を改めたせいで、お蔵入りとなったものだという。

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2018年10月19日 (金)

バッハ 音楽の捧げもの ほか 寺神戸亮/前田りり子/上村かおり/曽根麻矢子 @所沢MUSE 10/12

【父と子】

1747年の5月、ヨハン・セバスチャン・バッハは、息子のカール・フィリップ・エマニュエルが仕えていたプロイセンのフリードリヒⅡ(大王)に招かれ、王都ベルリン郊外のポツダム宮を訪れた。バッハは60代、大王は30代半ばである。大王は自ら用意した主題をバッハに与え、3声のフーガを所望すると、みごとにバッハは即興で応えたという。翌日、大王は4声、5声も跳び越えて、6声のフーガを所望したが、さしものバッハといえども、この難題には即座に応えることができず、拠点のライプツィヒに戻ってから緻密に作曲をしなおして、先の3声のフーガにも手を入れ、新しい6声のフーガに加えて、様々な種類のカノンと、4楽章のトリオ・ソナタ1曲を添えて、恭しく献呈した。これが今日に残る『音楽の捧げもの』の誕生であった。

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2018年9月 6日 (木)

東京現音計画#10 コンポーザーズセレクション5:山根明季子 7/11

【すべてはパチンコ・パーラーから始まった】

サックスとテューバの仲間、鍵盤楽器、打楽器の奏者と電子音響エンジニアによる室内楽ユニット「東京現音計画」が、コンポーザーズ・セレクションの第5回として、山根明季子を迎えて演奏会を行った。山根はクラシック音楽の枠にはまらないファッショナブルで、ポップ(押し出し)のつよい作品を早い時期から発表しており、1980年代の生まれながら、既に日本の作曲家のなかで、旗手となり得る活躍ぶりをみせている。ベテランでは湯浅譲二、細川俊夫、西村朗、野平一郎、棚田文紀らのベテランが国際的に一定の評価を受ける一方、若手では藤倉大を筆頭に、酒井健治などが台頭する昨今ではあるが、それらの裏の旗手となっているのが山根や、その夫である川島素晴、三輪眞弘、小池稚子といった独特の音楽言語と批評眼を備えたユニークな作曲家たちである。

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2018年6月21日 (木)

東京国際ヴィオラコンクール 本選①&② 6/1ー2

【力づよい中国の未来】

第2次審査から見守ってき東京国際ヴィオラコンクールも、4人のコンテスタントによる本選に突入した。この日のソワレに開かれたガラ・コンサートでは、コンペティションの副審委員長で、ヴィオラスペース全体のディレクターでもあるアントワン・タメスティ氏が、子どものころ、聴いた音楽は演奏家にとって、非常に重要な影響をもたらすと述べている。例えば、中国のコンテスタントはこれまで、非常にローカルな感覚を示すことが強かった。世界中に華僑が飛び出す開放的な一面も見られるのとは対照的に、国内的には依然として閉鎖系の文化も根強い同国では、音楽の強烈な中国訛りは日本や韓国のそれとは一線を画すものであった。中国を代表するアーティストである傅聰(フー・ツォン)と許忠(シュー・ツォン)、朱暁玫(シュー・シャオメイ)、上海クヮルテットなどのアーティストはどこかにこうした個性をうっすらと残しつつも、ノーブルな西洋音楽の特質を身につけたアジア人の先駆けである。

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2018年5月31日 (木)

東京国際ヴィオラコンクール 第2次審査 (2日目) 5/30

【早めに絞りすぎた】

コンペティション第2次審査の2日目を聴いた。8人全員を聴いての総括だが、忌憚なくいえば、最初のラウンドの突破を重視し、先のラウンドの準備まで手が回っていないコンテストタントが少なくないのではないかという印象をもった。そして、結果的にみると、よく準備された第1次審査だけで人数を絞ったことが仇となり、コンペティションのなかで成長していくようなコンテスタントを、このラウンドであまり見つけられないことは気になった。経験豊富で、傑出した審査陣からすれば、最初の15分だけで若者たちの才能を見抜くのも容易いことなのかもしれないが、ある程度、枠を広げておくことで、1番目のラウンドを抜けて自信をつけ、スコアを伸ばしてくる若者もいたかもしれないと思うと、いささか残念に思う。

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2018年5月29日 (火)

第4回東京国際ヴィオラコンクール 第2次審査 初日 5/29

【一挙に8名に絞る】

第4回東京国際ヴィオラコンクールは、5月26日から石橋メモリアルホールでの第1次審査が始まり、13の国と地域から集った32名のコンテスタントのうち、一挙に8名に絞り込まれて、29日からの第2次審査に突入した。この時点で参加者の国籍は5(4)に減り、地元日本に加えて、台湾、中国、韓国、セルヴィアの出場者が残っている。私はこのラウンドを、すべて聴けるように手配をした。個人的なことだが、今年はガラ・コンサートを捨てて、第2次審査の2日間と、ヒンデミット『白鳥を焼く男』による本選2日目にフォーカスして聴くことになっている。第1次審査を経て、選り抜かれた1/3ほどのコンテスタントによる演奏を聴ける予定だったが、若干、誤算が生じた。

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2018年2月16日 (金)

東京現音計画 #9 コンポーザーズセレクション4 近藤譲 1/31

【テニーの意外な顔】

東京現音計画の第9回のコンサートは、作曲家の近藤譲によるセレクションの回だった。このグループは、電子音響テクニシャンの有馬純寿、サクソフォン奏者の大石将紀、パーカッショニストの神田佳子、ピアニストの黒田亜樹、そして、チューバやセルパンといった低音の金管楽器を扱う橋本晋哉というメンバーをコアに構成されている。この日は1曲だけ、ヴァイオリンが入る曲があるため、亀井庸州がゲスト出演した。

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2018年2月 8日 (木)

関根日出男先生 一周忌 追悼演奏会 りんごとさくらのコンサート 2/6

【深いトレモロに感情を込めて】

チェコの言語、音楽、文化の研究家で、医師であった故関根日出男先生の一周忌を悼む音楽公演を覗いてきたので、報告したい。生前、氏は耳鼻咽喉科の医師として、東京の赤坂に開業され、患者を診る一方で、冷戦時代よりチェコの言語や音楽、文化に関する資料の収集等に努められ、日本におけるチェコ音楽の研究と普及に一方ならぬ貢献をされていた。昨年の1月18日、惜しくも亡くなられた。常に医師が本業であり、専門の学者ではなかったにもかかわらず、その業績にはしばしば一目が置かれ、2009年にはチェコ政府より「チェコ芸術の友賞」を授けられたことで、いっそう輝きが増した。

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