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舞台芸術

2017年11月20日 (月)

西澤健一(作曲、脚本) 歌劇『卍』 (原作:谷崎潤一郎) 世界初演 11/17

【作品と背景】

作曲家・西澤健一の作品をはじめて耳にしたのは、2012年の個展においてであった。西澤氏がどのような立場にある作曲家なのか、私はそれほど詳しいわけではないが、自らの才覚だけを頼りに、インディペンデントな活動をしているように見えるのは間違いではあるまい。前衛主義というのとはちがう。もともと私に彼のことを紹介した人によれば、もとは斬新な手法に基づく作風であったのが、勇気をもって転身し、聴く人とのコミュニケーションを重くみる作風に変えていったということだ。

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2017年11月13日 (月)

日生劇場 ドヴォルザーク 歌劇『ルサルカ』 演出:宮城聰 田崎組(一般公演/初日) 11/9

【芸術の使徒】

日生劇場のオペラ公演は、教育面や、契約者へのサービスという側面ももつ都合上、ユニヴァーサルな演出が求められる。それにもかかわらず、モーツァルトのほか、ヤナーチェク、アリベルト・ライマン、そして、今回の『ルサルカ』など、なかなか日本の舞台にかからない作品を手ごろな箱のなかで見せてくれる貴重なシリーズでもある。より開かれた対象に、本物の舞台を観てもらうという正攻法である。券売所で並んでいると、案内の女性が「オペラ」を「ミュージカル」と呼んでしまう微笑ましい劇場は、生音の音響としてはややデッドな弱点があり、グランド・オペラの上演にはオーケストラのためのスペースが足りないという問題があるが、ライマンのオペラを上演した際、オーケストラを一部、舞台にあげてしまう工夫が当たった。それぞれの公演の演出チームは変わっているものの、実践の蓄積のなかで得た知見は、年を経ても劇場のなかで確実に踏襲されているようだ。今回はさらに、合唱や管弦楽のバンダをときどき、客席を取り巻くように配置した山田和樹らしい趣向で、一歩前進というところである。劇場としては狭い空間を、効果的に拡張するアイディアであった。

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2017年9月26日 (火)

第7回チェコ音楽祭「ヤナーチェク・ナイト」 歌劇『イェヌーファ』(抜粋) ほか 9/7

【顕微鏡で覗いたような緻密さ】

第7回を数える「チェコ音楽祭」だが、今年はオール・ヤナーチェク・プログラムで、歌劇『イェヌーファ』の抜粋公演がメインという意欲的なものだった。歌劇はピアノ伴奏に、一部にヴァイオリンが参加。キャストはイェヌーファのほかに、コステルニチカとラツァだけに絞られたが、予想以上に素晴らしいパフォーマンスとなっていた。前半の室内楽プログラムも含めて、どの演目も顕微鏡で覗いたような緻密さを示している。よく考えられ、限られたリソースでも、それをどのように使うと、作品の魅力がもっともよく伝わるのか、考えた人のアイディアが素晴らしいというほかないのだ。

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2017年9月20日 (水)

ラモー 歌劇『レ・パラダン』 ジョイ・バレエ・ストゥーディオ 再演 9/1

【正統派の舞台づくり】

ジョイ・バレエ・ストゥーディオは、2012年の『プラテー』を皮切りに、再演を入れながら、『レ・パラダン』『優雅なインドの国々』とラモー作曲の3つの作品を、フル・スペックでレパートリー化した素晴らしいカンパニーである。私は初回の『プラテー』をみて、このブログのなかで好意的な評価を示した記憶がある。その後、このカンパニーの公演に関心は強かったが、なかなかタイミングが合わずに、これが2度目の視聴となった。『レ・パラダン』は2013年プレミエからの再演であるが、この日の指揮も担当したパリ市立音楽院(CRR de Paris)教授であるステファン・フュジェと、過去の公演でプラテー役を歌った著名なテノール歌手、エミリアーノ・ゴンザレス・トーロのサポートを受けて研究を進め、未だ公刊された現代譜のない作品から、いくつかのピースを現代譜に起こして世界初演する栄誉にも恵まれた。

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2016年9月10日 (土)

神田慶一 歌劇『青い海よりおおいもの』 国立オペラ・カンパニー「青いサカナ団」 9/3 (初日)

【オペラ・シンフォニア】

クラシック音楽は、筋書きのあるドラマだ。何百年にもわたって、誰かがそれを大切に守りつづけてきた。もしもそれが演劇だとするなら、台詞、演じ方も、舞台装置や演出のあり方、間の取り方に至るまで、数百年の歴史のなかで受け継がれてきたものが確かにあるはずだ。新しい時代の人々はそうしたものへの敬意を払いながら、できるだけ丁寧な再現を試みることで芸術家として認められている。こうした態度はオーセンティック、あるいは、オーソドックスと呼ばれている(後者は批判的な意味でも使われる)。一方、ピエール・ブーレーズは歴史的なものの権威に胡坐をかき、博物館で大切にしまわれた宝物のような姿で、伝統音楽があることを強く否定した。現代では、オーセンティックなあり方を守りながら、芸術家が独自の個性で伝統にぶつかり、これを刷新するという考え方と、時代と対話するなかで生じる、まったく未知の領域を切り開く表現という考え方が融合し、これらのグラデーションのなかで、理想的な創造と再現のあり方が模索されている。

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2016年3月19日 (土)

クリストフ・ロイ(演出) ヤナーチェク 歌劇『イェヌーファ』 新国立劇場・オペラ部門 2日目 3/2

【ワールド・スタンダードな舞台】

ヤナーチェクの歌劇『イェヌーファ』は、世界的にはポピュラーな演目のひとつであるが、日本国内での上演は2004年の二期会の公演が最後であったと思う。ドイツ語上演ではあったが、舞台全面に土を敷いたマルティン・オタヴァの演出、そして、題名役であった津山恵の鮮やかな変身の演唱は独創的なものであり、終幕の最終場に移る際、イェヌーファとラツァの背後の深紅の緞帳が下り、2人だけが肩を寄せて歌う場面の神々しさなど、今日までも記憶に残るプロダクションであった。このドイツ語訳はフランツ・カフカの友人としても知られる、大文人マックス・ブロートが苦労して織り上げたもので、そうしたものが長くドイツ圏をはじめ、世界の広い地域で上演の主流を占めていたことは理解に値する。

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2015年10月21日 (水)

二期会 リヒャルト・シュトラウス 歌劇『ダナエの愛』 深作健太(演出) 準・メルクル(指揮) @東京文化会館 10/4

【概要】

物故した若杉弘氏や岩城宏之氏は生前には「初演魔」といわれ、競うように日本でまだ演奏、上演されていない作品の数々を舞台にかけて、日本では限定的にしか知られていなかったようなクラシック音楽の裏御殿を披露した。岩城がどちらかといえば管弦楽作品に強かったのと比べると、劇場育ちの若杉はやはり、オペラに大きな足跡を残している。リヒャルト・シュトラウスの歌劇『ダナエの愛』も、若杉による演奏会形式の初演が行われている。2006年のこの公演は、新国立劇場や二期会、藤原歌劇団、東京室内歌劇場などのオペラ・カンパニーによるものではなく、(財)新宿文化・交流財団主催のニッチな公演であったせいか、それほどの話題とはならなかったはずだ。この度、二期会が舞台上演としては初演となる舞台を作り上げたのは快挙である。映画や演劇の分野で活躍する、深作健太がオペラ初演出に挑戦。管弦楽は、準・メルクルが東京フィルを指揮した。

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2015年10月 7日 (水)

カンブルラン ワーグナー 歌劇『トリスタンとイゾルデ』(演奏会形式) 第1日 読響 サントリー定期 9/6

【契約延長に相応しい舞台】

これまでも読響では定期演奏会において、演奏会形式で規模の大きなオペラ上演を試みたことはあった。しかし、サントリーホールで5時間ぶっ通し、しかも2公演という例はきわめて珍しい。オーケストラとして考え得るなかで、最高の晴れ舞台が用意された。シルヴァン・カンブルランも就任当初は、欧州で評価の高い自身の指揮によるオペラ上演の可能性について、数週間の準備期間が必要であり、それを日本側が用意するのは難しいから・・・と消極的な姿勢をみせていた。しかし、この男はいつも現実的に、不可能を可能にしてきた人物である。アイスランドの火山噴火の影響でパリからの直行便が飛ばなかった際は、マドリーからテルアビブ、香港を経由して、60時間の長旅を厭わずに日本での公演に駆けつけてきた。東日本大震災の際にも、彼は原発事故などの困難な状況をかいくぐっても、日本のオーケストラと聴き手たちを見捨てることはなかったのである。

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2015年8月 3日 (月)

粟國淳(演出) ドニゼッティ 歌劇『ドン・パスクヮーレ』/J.シュトラウス 喜歌劇『こうもり』 (各抜粋) 新国立劇場研修所 オペラ7月試演会 第16-18期生 2日目 7/19

【新国研修所の新体制】

新国立劇場の研修所の公演は、大変に工夫を凝らしたものだ。オーケストラ付きで大劇場を舞台に・・・という訳にはいかないものの、ミニ・アンサンブルを気の利いた指揮者がコントロールしてコンパクトな舞台をつくったり、質の良いコレペティがピアノやチェンバロなどを弾いて研修生をサポートしつつ、大劇場であまりできていない演目をカヴァーしたり、ときに抜粋ながらもエッジの効いた組み合わせで上演をおこなっている。研修のシステムがある程度、充実したものであり、質の良い、日本のオペラ公演に是非とも必要とされる人材を輩出していくことが大前提だが、近年の実績をみれば、それも申し分ない。例えば、中村恵理はオランダと英国の有名な育成プログラムも経て、欧州の主要劇場で活躍できる歌い手に成長したが、彼女を筆頭に、多くの研修生がオペラの一線で活躍しているのである。

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2015年7月20日 (月)

宮田慶子演出 松村禎三 歌劇『沈黙』 新国立劇場 オペラ部門 下野竜也(指揮)東京フィル 6/28

【概要】

新国立劇場が、松村禎三の歌劇『沈黙』を大劇場で取り上げた。当劇場におけるこの作品の初演は2000年、二期会との共同制作で、その後、2005年には地方から優れたプロジェクトを招聘する第1弾として、大阪音大「カレッジ・オペラハウス」のプロダクションが上演された。これには私も接しているが、当時、刻み込まれた深い印象といったら忘れられようはずもない。新国はさらに、2012年に同劇場演劇部門の芸術監督である宮田慶子を演出に起用して3回目の上演をおこない、今回はその再演ということになるが、いよいよ大劇場での演目に昇格したというわけである。

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