真の個性派指揮者 ヘルベルト・ケーゲルの世界 ①
【頂上を極めたものだけが挑戦できる】
クラシック音楽において個性的な表現者であること、そうあろうとすることは重要なことだ。ただ、人間が単に個性的であることと比べて、クラシック音楽のような伝統芸術において個性的であることは、根本的に意味あいが異なることは、あまり意識されているとは言いがたいのではなかろうか。この分野で真に個性的なアーティストとは、亡くなったフリードリヒ・グルダのように、伝統技法の頂点を極めた人だけが目指すことのできる境地である。それ以外は無価値であるとは言わないが、大胆すぎる挑戦であることは間違いない。クラシックの音楽家は個性的である前に、その道を完全に辿りきることなしに、なにかを成し遂げたと思うべきではないのだ。
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